Winnyの技術のいいとこ取りしたコンテンツ配信サービス、秋にも本格展開

IIJとドリームボートは、早ければ今年秋にも、P2P技術をベースとしたコンテンツ配信サービス「SkeedCast」を開始する予定だ。

» 2006年08月30日 09時09分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 「P2Pはアーキテクチャから言えばNGN(Next Generation Network)と対極にあるもの。P2Pというおもしろい技術を用いて新しいコンテンツ配信のアーキテクチャを構築したい」――インターネットイニシアティブの代表取締役社長、鈴木幸一氏は、8月29日に開催した記者セミナーの席においてこのように語った。

 同社は先に、ドリームボートと協力し、P2P技術を用いたコンテンツ配信システム「SkeedCast」を開発、提供することを発表済みだ。8月より試験運用を開始しており、早ければ今年秋にもSkeedCastをベースとしたコンテンツ配信サービスを開始する予定という。

 これまでの数年間、コンテンツ配信の役割は、主にCDN(コンテンツ配信ネットワーク)が担ってきた。足回りの整備が進んだこれからのネットワークに対し、同じように、P2P技術をベースとしたより効率的な配信プラットフォームを提供していきたいという。

 IIJネットワークサービス本部の木村和人氏によると、今後、さらに多くの端末がネットワークに接続され、動画も含めたコンテンツがアップロードされるようになれば、既存の「クライアント/サーバ型のモデルでは負荷が集中し、検索などの処理を行うには限界がある」という。その解決策として、端末どうしが直接通信するP2P型のモデルは有効だとした。

 その例の1つが、P2Pファイル交換ソフトの「Winny」だ。Winnyには、ウイルスによる情報流出や違法コピーファイルの流通といった側面がつきまとう一方で、キャッシュとプロキシ、上流/下流の概念、クラスタリングといった仕組みによって効率のよいファイル配送を実現しており、「技術的にいいものを持っている」(木村氏)

役割の分割で管理とセキュリティを実現

 ドリームボートでは、Winnyの作者である金子勇氏を顧問に迎え、Winnyの持つ技術を組み入れた、セキュアなコンテンツ流通の仕組み作りに取り組んでいるという。それがSkeedCastだ。

 ドリームボートCTOの坂田和敏氏によると、SkeedCastはWinnyのファイル配送や検索の仕組みをほぼフルに実装しているが、「Winnyでは1つのプログラムだったものを、役割ごとに3つに分けた」という。

 コンテンツの投入だけを行う「EntryNode」、実際の配信ネットワークを構成し、ファイル共有を行う部分となる「SkeedCluster」、エンドユーザー向けの受信専用ノード「SkeedReceiver」だ。「役割を分けることによって、オリジナルコンテンツの所有者を明確にし、トレーサビリティを確保できる」(坂田氏)。コンテンツをアップロードできるのはEntryNodeだけなので、ユーザー情報の漏洩は起こらない。

 しかも、EntryNodeから配信されるコンテンツにはすべて、ユニークな「SkeedID」が付与される。これにより、コンテンツの検索を容易にするとともに、コンテンツごとの配信コントロールを行えるようにした。

 管理者から見た場合のメリットは、P2Pという自律的なネットワークであるため「管理」が容易なこと。コントロールサーバと呼ばれる制御サーバと各ノードが定期的に通信を行うことにより、ノードの動作状況やコンテンツの拡散状況を把握し、制御することができる。「不安定なノード、不審なノードを検出するなど、緩やかな形だけれど完全にコントロールすることができる」(坂田氏)

 一方、コンテンツ配信側でのビジネス展開を容易にする仕組みも用意した。スクリプトによって既存のポータルサイトなどと容易に連動できるようにしたほか、DRMなどの技術を組み合わせることにより課金の仕組みを実現できるようにしている。

 IIJとドリームボートではSkeedCastの実証実験を進め、秋から冬にかけて本格サービスを展開する計画だ。他のサービスプロバイダーと連携しての分散ダウンロードなども視野に入れているという。

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