米政府に納入されるInfineonのRFIDチップには、データ暗号化技術など50を超えるセキュリティメカニズムが組み込まれている。
独Infineon Technologiesは、米政府と協力して、2006年末までに米国の全パスポートをRFID対応にする計画に取り組むと発表した(8月22日の記事参照)。
同社の担当者は8月28日に、同社は電子パスポート向けのIC技術の供給に関して、米政府から数百万個の注文を受けたと語った。
米国務省は14日にコロラドのパスポート発行機関でRFID対応パスポートの発行を開始した。向こう2〜3カ月で7000あまりのパスポート申請受け付け機関に拡大する計画だと同省はWebサイトで述べている。
米政府は年内に同国の全パスポートにRFIDチップが組み込まれると予測している。
同国の電子パスポートは国際民間航空機関(ICAO)が採用した仕様に準拠しており、Infineonの「セキュア非接触マイクロコントローラ」がパスポートの裏表紙に埋め込まれる。
このチップにはパスポートに載っているのと同じ情報――氏名、生年月日、性別、出生地、パスポート発効日、パスポート番号、有効期限――が含まれている。
電子パスポートには、所有者の写真のデジタル画像も格納される予定だ。RFIDチップには、今後バイオメトリクス情報を格納できるだけの十分なメモリスペースがある。
Infineonは既にRFIDパスポートを手掛けた経験がある。同社はドイツ、香港、ノルウェー、スウェーデンなど電子パスポートの導入や試験を開始した20カ国以上にRFIDチップを供給している。
同社はイタリア、フィンランド、アラブ首長国連邦、オーストラリア、ベルギー、香港と協力して、電子証明書に組み込まれるチップも提供している。
「米国は世界中でよりセキュアな旅券を採用する動きの先導役を果たしている」とInfineon北米法人のマネージングディレクター、クリストファー・クック氏は発表文で述べている。
「セキュアな個人識別、金融取引、電子システムアクセス専用チップの主要サプライヤーとして、当社のチップは世界中で最も厳しいセキュリティテストの幾つかを通過した」(同氏)
しかし、米国民の圧倒的多数がRFIDパスポートに反対している。昨年の意見公募期間に意見を寄せた国民のうち98.5%が、電子パスポートに反対していた。寄せられた2335件の意見のうち、2019件はセキュリティとプライバシーを最大の懸念として挙げていた。
また、パスポートへのRFID技術採用については、プライバシー・セキュリティ活動家から絶えず抗議の声が上がっていた。
これに対応し、国務省は電子パスポートのセキュリティを強化し、シールドやアクセス制御対策を加えた。
InfineonのRFIDチップは、データ暗号化技術、表面に保護シールドを導入するなど、50を超えるセキュリティメカニズムが組み込まれていると同社担当者は話している。
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