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» 2006年09月07日 08時00分 公開

ソニー生命と出光の事例で垣間見えるSOAの本質動き出したSOAのいま(1/3 ページ)

国内におけるSOAの成功事例はまだそれほど数は多くはない。そんな中、出光興産とソニー生命はそれぞれまったく異なるアプローチでSOAによる基幹システムの再構築を行った。だが、2つの事例には幾つかの共通点もあった。

[谷川耕一,ITmedia]

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 国内におけるSOAの成功事例はまだそれほど数は多くはない。そんな中、7月に開催されたガートナーSOAサミットでは、2つのユーザー事例が紹介された。この2つはともに同じSOAの成功事例ではあるが、構築のアプローチも出来上がったシステム構成も極めて対照的なものとなっている。

出光はESBをSOAの基盤として活用

 出光興産は、SOAの事例としては教科書的ともいえるESB(エンタープライズサービスバス)をバックボーンとしたシステムを構築した。

 ESBとは、SOAに基づいたアプリケーション統合のインフラストラクチャとなるマルチプロトコルをサポートする、高機能なメッセージバス、あるいはそれを含む統合型ミドルウェアテクノロジ、ミドルウェア製品と定義される。

 出光興産では、基幹システムの再構築のフェーズからESBを導入した。通常は基幹系システムに手を入れるとなると、コストも手間も掛かるが、ESBを活用することで柔軟なシステムの構築を比較的短時間で実施できたという。

 かつて石油業界はさまざまな規制により保護されていた。しかし、1996年に特定石油製品輸入暫定 措置法(特石法)が廃止され、自由化が進んだ。現在は4グループを中心に業界が再編された状況だ。そんな中、出光興産はいわば独自路線の業務を展開している。ESBを活用したシステム構築を実施することになった理由として、出光興産の情報システム部 システム総合研究所 情報技術課の澤井隆慶氏は次のように説明する。

出光興産の澤井隆慶氏

 「業界での競争が激化する中、システムが追い付かないから事業の改革ができないというのでは困る。システムに、変化対応力を付ける必要があった」(澤井氏)

 メインフレームのリプレース時期も考慮しつつ、コンピュータ資源を最小限にする変化対応力を持ったまま実現できるかが課題だ。また、旧来のシステムを継承するアーキテクチャーを確立したいまま追加変更したのでは、似たようなデータやプログラムがたくさんできてしまうという懸念もあった。

 これらを解決するために、既存システムを連携させる部分でESBを採用することにした。SOAやESBを念頭にシステムを考えたから既存業務システムの連携に至ったのではなく、システムを活用する現場としては、業務アプリケーションは連携して動くのは当たり前という感覚があった。先にSOAやESBがあったのではなく、柔軟なシステムを実現しそれを継続していくためにアーキテクチャーを洗練していった結果、ESBを採用することになりSOA的なシステムに至ったのだ。

 「かつて、SOAはラッピングの技術だと思っていた。今では、SOAはその構造が大事で、逆にいえば柔軟な構造を考えていったらSOAになっていたというのが現実。機能ベースで考えるのではなくワンファクト、ワンプレースでないと、変化対応力のあるシステムにはならない」と澤井氏は話す。

 システムは、業務的に意味を持った処理の単位で可視化されている。処理が大きいとか小さいといったことではなく、人が見て分かるように分けることで、誰でも使えるシステムになる。また、業務的に意味を持った形で連携させることが重要で、システムの機能単位で考えるべきでないという考えだ。その上で、業務アプリケーション上のさまざまなルールなどは、ミドルウェアの部分で違いを吸収することで連携がスムーズに行える。

 「こっちのシステムではある商品をAと呼んでいるのに、あっちのシステムではBと呼んでいる。さまざまな違いを吸収する仕組みが、必ず必要になる。個々のサービスの中でその違いを吸収しようとするのではなく、基盤の中でそれをやるべき。これがESBを活用することであり、SOAの重要な点だと考えている」(同氏)

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