ファイルの世界をネットのように――グローバルネームスペースに取り組むBrocade

ファイルサービスの領域をFAN市場と定義するBrocade。3月に買収したNuView出身のメーター氏は、同社のFAN戦略を支える。「物理的な位置を知っていなければファイルにアクセスできないのは非効率的だ」と指摘する。

» 2006年09月12日 13時02分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 「ネットの世界ではIPアドレスを知らなくてもYahoo!にアクセスできる。なのに、なぜファイルの世界も同じようにならないのか?」――こう話すのは、2006年にBrocade Tapestryファイルサービス製品群担当副社長兼CTOのラウル・メータ氏。

 同氏が指摘するのは、エンドユーザーがドライブレターを頼りにファイルの保存場所を記憶している仕事のやり方。企業の情報共有には複数のファイルサーバを利用していることが多いが、その結果、エンドユーザーのWindowsには数多くの共有ドライブが設定されてしまう。「物理的な位置を知っていなければ、必要なファイルにアクセスできない。しかも共有名称も分かりづらい。これは非効率だ」(メータ氏)。

 同氏はこの問題を解決に向けて、NuViewを立ち上げ、ファイル管理ソフト「Storage X」を開発。論理ディレクトリとUNCパスを対応付けるファイルサービス向けのDNS機能を提供することで、単一のディレクトリですべてのファイル共有を管理できる「グローバルネームスペース」を可能にした。

 同氏が設立したNuViewはこの3月、FAN(File Area Network)戦略を推進するBrocadeに統合されたが、メータ氏はBrocadeのTapestryファイルサービス製品群担当副社長兼CTOとして、FAN戦略を支えている。

ラウル・メータ氏 Brocade Tapestryファイルサービス製品群担当副社長兼CTOのメータ氏

ファイルの管理には無駄が存在している

 「ファイルアクセスの問題は、ストレージの管理コストにも影響してくる」と同氏は話す。アクセスされなくなったファイルが高価なプライマリストレージに残ったままになれば、その分、保管コストが高まるからだ。

 メータ氏によると、ファイルサーバ内にあるファイルの約80%は過去30日間アクセスされていない。この保管場所をより安価なセカンダリストレージに移動させれば、コストをぐっと下げることができる。だが、エンドユーザーに変更を告知したり、ユーザーも新たな保存場所を覚えることを余儀なくされる。

 「ファイルの保存場所を変えると、1つの変更だけで告知など約3ドルのコストがかかると言われている。最近の事例のオーストラリアの顧客は、アクセスのなくなったファイルをセカンダリに移行させたが、その数は2000万ファイルに及んだ」。それほど、ファイルの管理にはまだ非効率が存在しているという。

WAFSとの相性

 グローバルネームスペースは、先行して投入しているワイドエリアファイルサービスとの相性もいいようだ。メータ氏は「エンドユーザーへのサービスに影響がでないため、ストレージ統合などがやりやすくなる効果もある。ただ、リモート拠点のWAN越しのアクセスは当然遅くなる。それをWAFSが補う」という。

 同社は、キャッシュを利用してWAN越しのファイルアクセスを高速化する「Tapestry WAFS」も提供しており、「相乗効果を狙いたい」。

 SANによるデータセンター内向けのストレージネットワークでリーディングベンダーの地位を築いてきたBrocadeだが、エンドユーザーとデータセンターを結ぶ「FAN」の領域でも同様の地位を築くことができるだろうか。

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