一筋縄ではいかない「マルチベンダーシステム管理」――MSのモデリング構想の行方(1/2 ページ)

Microsoftは他の大手ITベンダーと協力してSMLと呼ばれるマルチベンダーシステム管理テクノロジーの策定に取り組むことになった。SMLは同社製品の構成および監視機能の強化を図る上で要となるが、実現への道は平坦ではないだろう。

» 2006年09月25日 07時00分 公開
[Rob Helm,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Service Modeling Language(SML)と呼ばれるマルチベンダーシステム管理テクノロジーが、Microsoftが同社製品の構成および監視機能の強化を図る取り組みにおいて中心的な役割を果たすかもしれない。SMLはシステム管理目的でコンピュータシステムおよびネットワークのモデリングを行うための言語である。Microsoftのほか大手ITベンダー9社が、SMLの仕様策定、ルーターやデータベースサーバといった共通コンポーネントのモデルのライブラリの開発、各社のシステム管理製品へのSMLの実装を計画している。

 これまでのマルチベンダーシステム管理標準の中で、システム管理における飛躍的な簡素化を実現できた前例はないものの、SMLはエンタープライズシステム管理を簡素化できる可能性がある。管理ソフトウェアベンダーおよびインテグレータは、この取り組みの経過を見守る必要があるだろう。

モデリングによるシステム管理の簡素化を目指すSML

 SMLは、Microsoftが進めるDynamic Systems Initiative(DSI)構想の要となると思われる。DSIは、ソフトウェアをより効果的に管理し、システムの再構成および問題の特定を素早く行えるようにするテクノロジーの開発を目指すプロジェクトである。

 DSIでは、いずれ各メーカーが自社のハードウェア製品およびソフトウェア製品に、製品管理に必要な情報を付加して出荷することが前提となる。必要な情報とは、各製品に含まれるまたは各製品が依存するコンポーネントを表す構成モデルや、製品の通常の動作と異常な動作を表すヘルスモデル、製品の監視中に収集できるデータの種類などである。

 この構成モデルやヘルスモデルは、ソフトウェアのインストール、設定、監視の際に管理ツールにより使用されることになる。例えば、Microsoftのシステム監視製品Microsoft Operations Managerの将来のバージョンでは、ヘルスモデルを使用してアプリケーションエラーの根本的な原因を特定できるようになるかもしれない。

 Microsoftは当初、構成モデルもヘルスモデルも同社が開発した記述言語のSystem Definition Model(SDM)を使用して定義することを計画していた。現在では、Dynamic Systems Initiative構想実現に向けてSMLを使用すること、またSMLを他のベンダーと協力して開発することを計画している。したがってSDMは、Microsoftが提出するSMLの最初のプロポーザルとなる。

 将来的にSMLに対応する予定のMicrosoft製品は、Visual Studio、Systems Management Server(System Center Configuration Managerに名称変更予定)、Operations Managerである。2007年後半にリリースが予定されている次期Windows Server(コード名:Longhorn)でもSMLモデルを実装し、同製品に搭載される構成ツールのServer Managerがこのモデルを使用する予定である。

 ただしSMLによって、同じくMicrosoftが他のベンダーと策定を進めてきたWS-Managementプロトコルが排除されるわけではない。WS-Managementは、リモートシステムの監視と構成に使われるWebサービスプロトコルを指定する。ただし、構成モデルやヘルスモデルのフォーマットを定義したり必要とするものではない。システム管理ツールでは、SMLとWS-Managementの両方を使用することができるだろう。例えば、管理コンソールでWS-Managementプロトコルを使用してシステムのデータを収集し、このデータをSMLベースのヘルスモデルを使用して解析し、システムが正常に動作しているかどうかを判断するという使い方が考えられる。

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