ポッドキャスティング、企業で成功(2/3 ページ)

» 2006年10月06日 16時32分 公開
[Stan Gibson,eWEEK]
eWEEK

投資というハードル

 オーディオ/ビデオ作成のための設備は既に整っていたが、MassMutualではちょっとしたハードルに直面した。新たな投資が必要だったのだ。「電話を通じて高品質のインタビューを行うために安価な装置を購入した」とシチェバック氏は話す。同社が選んだのは、Avid Technologyの編集ソフトウェア「Pro Tools」およびDynaMetricの電話装置だった。

 6カ月間にわたってポッドキャスティングを続けてきたシチェバック氏によると、力強い反応があったという。「ダウンロードが劇的に増加した。視聴者のフィードバックも良好で、迅速かつタイムリーに返ってくる」と同氏は話す。MassMutualの約4200人の保険代理人の約20%に当たる約850人が、毎週月曜日の朝にポッドキャストを電子メールで送信してもらうサービスに登録した。

 シチェバック氏は次のステップとして、ビデオプログラムの追加およびチャンネル数の拡大を目指している。新たなチャンネルでは、MassMutualの他部門の従業員(フィールドマネジャーなど)を対象としたプログラムを制作するという。

 MassMutualは主として社内のポッドキャスティングにフォーカスしてきたが、自動車メーカーのGeneral Motors(GM)では社外に目を向けており、製品マーケティングを補助する手段としてポッドキャスティング技術を活用している。2005年2月に最初のポッドキャストを配信して以来、GMはこれまでに30本以上のポッドキャストを制作した。

 ミシガン州デトロイトに本社を置くGMでニューメディアを担当するディレクター、マイケル・ワイリー氏は、「われわれは基本的に、伝染性の興奮をつくり出そうとしている。スケジュールに従って配信するのではなく、面白いコンテンツが出来上がったときにだけ配信するようにしている」と話している。

 GMのポッドキャストは、同社のブログサイト「Fastlane」と連携している。Fastlaneは、コンシューマーや専門家に好きな製品について記事を書いてもらうことによって製品人気を盛り上げようという取り組みである。

 「われわれが目指しているのは、専門家がその製品についてどんな思い入れを抱いているかなどを紹介する一種の非公式のプレゼンテーションだ。例えば、コルベットのレーシングチームがル・マンシリーズに向けてどんな準備をして、いかにレースを制覇したかといった内容だ」とワイリー氏は説明する。GMのポッドキャストは10〜15分間の長さで、ワイリー氏を含め2人のキャスターが担当する。

 ニュージャージー州オールドウィックに本社を置く保険業界誌出版社のA.M. Bestでは2月から、「Best Day」という名前の日刊ポッドキャストを制作している。A.M. Bestのポール・ティニレロCIO(最高情報責任者)によると、同社はメディア企業として、高い品質を目指して努力しており、自社のポッドキャストで流す広告を販売することにも関心があるという。

 ティニレロ氏は、プログラムの制作、コピーの作成、オーディオの編集を「Wall Street Journal」の元編集者のブライアン・コーエン氏に依頼した。また、ポッドキャストのオープニングとクロージングには、プロの声優であるダン・ケリー氏を起用。A.M. Bestは、マイクロフォン、PC、「Audacity」と「Sound Forge」ソフトウェア、電話接続装置を備えたスタジオを設置した。ティニレロ氏によると、現在までの経費総額は1万ドルをかなり下回っているという。

 それでもティニレロ氏は、ポッドキャスティングの最大の魅力の1つを見失ってはいない。その魅力とは、「形式ばらない」ということである。「あらかじめ準備したものよりも実際の会話の方が、視聴者の反応はいいようだ。メインニュースや短いコンテンツよりも10分間の会話の方が人気がある」とティニレロ氏は話す。日々の配信業務は、同氏のほか、A.M. Bestのコミュニケーション担当副社長のリー・マクドナルド氏およびマーケティングディレクターのテリー・ピール氏の3人で担当している。

 A.M. Bestでは、ビデオポッドキャストの準備も進めている。ティニレロ氏によると、この構想には「数万ドル」の経費を追加投入しているが、まだ立ち上げるまでに至っていない。設備に含まれるのは、スタジオ、3台のビデオカメラ、照明などで、今後さらに、グリーンスクリーンなど高度なビデオ手法を利用するための技術も導入する予定だという。

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