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» 2006年10月11日 08時00分 公開

テレビと同じ課題を抱える動画配信インターネットと映像新時代 第1回

インターネットによる動画配信の盛況ぶりは驚くほどの勢いで広がり、「映像新時代」の到来をうかがわせる。だが、本当にそんな時代は来るのだろうか。このままでは、今のテレビと同じ運命をたどることになると考えられないか。

[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

 インターネットを利用した映像関連サービスが脚光を浴びている。ブロードバンドの普及で、映像がインターネットのコンテンツとして現実味を帯びてきた証だろう。

 動画を記録・編集・保存・配信してデータとして扱えるようになってから、まだ100年程度しか経過していない。情報社会の歴史では、文字や静止画などに比較して極めて浅いものだ。しかし動画の持つ情報力は圧倒的で、映画とテレビでその手法が確立するや、時代は一気に動画の虜になった。

 そこで、「映像新時代」に求められる本質について考える上で、インターネットが新世紀情報社会をひらこうとしている現在における動画の状況を概観してみる。

動画配信のジレンマ

 インターネットと映像でまず思い浮かぶのは動画配信サービス。先進国ではキャリアを中心にしたインターネットテレビが事業化に向けて動いている。

 日本でも、2005年あたりからUSENが運営するインターネット動画配信サービス「GyaO」が話題だ。さまざまなジャンルの映像作品が、無料かつオンデマンドで視聴できる点が大きな人気を集めている。ドラマなどのオリジナルコンテンツにも力を入れ、06年6月で視聴登録者数が1000万人を突破した。国内のサービスで短期間にこれほどの勢いで成長した例は珍しく、そこに動画の持つ力を改めて実感できる。

 従来のテレビ放送に比較したインターネット動画配信の強みとして、コンテンツの多様性とオンデマンド型サービスという二点があげられる。特にオンデマンドが持つ、利用者が好きなときに視聴できるメリットは大きい。筆者の周辺にも、決して多くはないが確実に存在しているインターネットで映画やドラマを楽しむ人の多くが、その二つのメリットは画質など従来のテレビに劣る部分を十分補うだけの魅力があると考えている。

 06年に入って、ヤフーなどのインターネット企業も動画配信に力を入れ始め、テレビ局も電通などと連携したサービスを立ち上げるに及び、競争環境は短期間で急速に激化した。登録者数や視聴時間でトップを行く「Gyao」でさえ、多くの広告を流してもなお、コンテンツや顧客の獲得コスト、システム強化の投資を回収するには至っておらず、収益面で大きな課題を抱えている。それは、同社の決算にもはっきり現れている。

 広告をベースにした無料放送という点では、従来のインターネット動画配信がコンテンツ課金中心だったことと比べて、画期的だと受けとめられた向きもあった。しかし実際には、民放テレビと同じ手法で、ビジネスモデルとして特に新規性があるわけではない。これはこのサービスの今後を占う上で重要だ。

 今後拡大が期待される動画配信だが、ロングテールに対応したコンテンツの拡充、画質や配信能力の向上など、一般にいわれる課題への対応はもちろん必要だろう。しかし、その行き着くところに「映像新時代」の本質があるようには、どうも思えない。早晩、現在のテレビが直面している課題と同じ壁に突き当たるのではないかと思われる。

番組作りを忘れたテレビ

 テレビは現在もなお動画ビジネスの中核に位置する産業だが、最近の各社収益は芳しくない。長引く景気の低迷で、主たる収入源である企業からの広告出稿が不調だという解釈は、最近の状況をみるにあまり妥当ではないようだ。インターネットへの番組配信もその打開策として期待されているようだが、収益の低迷を補うにはまだ非常に心もとない。

 テレビ視聴のトレンドを端的に表すとされる視聴率データを見ても、ここ数年は明らかに漸減してきている。その傾向は、ドラマや教養娯楽など制作側の企画や意図が強く反映されるジャンルで特に著しい。06年になってから放映された番組で高視聴率が話題になったものは、オリンピックやボクシングなど大半がスポーツ中継。これらの事実が示唆するものは非常に重要だ(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第八回」より。ウェブ用に再編集した)。

なりかわ・やすのり

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


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