ERP導入に復活を賭けた老舗企業――在庫3分の1減、売上げ15%増への執念事例から学ぶ「座礁しないERP」(1/2 ページ)

中堅・中小企業にとって、ERP導入は容易なことではない。しかし、システム導入によって悪環境から立ち上がった企業がある。迷走状態の現場を救ったERPの威力とは?

» 2006年10月16日 12時17分 公開
[アイティセレクト編集部]

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不況の波に押し流される前に抜本改革

 1923年創業のフジ矢はペンチ、ニッパなど作業工具の開発、製造、販売を主な事業にしている。プロ向け高品質工具のシェアでは25%を占めるなど日本市場でのナンバーワンの座を保っている。同社の特徴は約550アイテムの多品種小ロットで商品を生産していることだ。バブル崩壊で2001年ころから市況が悪化し始めた時、代表取締役の野赴ア伸氏は、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営する情報化投資活性化支援事業、ITSSP(ITソリューションスクエアプロジェクト)に参加した。

画像 フジ矢 代表取締役社長 野赴ア伸氏

 プロ向けの製品は一般製品より価格が割高。しかも多品種の製品を生産をしなければならないので、現場の勘がものを言う世界になりがちだ。こうした体制を抱える企業は「不況には強い」と思われがちだが、バブル崩壊後の市況の悪化はそんな一般論を踏み潰すほどの凄まじさだった。

 野侮ミ長が真っ先に頭に浮かべたのは、「経営効率」。一つずつ無駄を省くことも大切だが、抜本的な改革に迫られていることを実感していた。そこで、IT、具体的にはERPの導入を頭に浮かべたのだが、その前にすることがあった。経営のトップたる自身が明確な目標設定をすることだ。そしてその目標を実現するために外部のコンサルタントの協力を仰ぎ、根本的な問題点を洗い出してから、ERP導入へと向かう道を選んだ。最初からシステムに合わせて考えるのでは問題は見えてこない。

5年間で売り上げを1・5倍に

 野侮≠ヘITSSPのプロジェクトに参加することで、まず「5年間で売り上げを1・5倍にする」という中期経営計画を立て、コンサルタントの支援を受けながら、業務を見直しに着手した。そこで改めて気づいたことは、製造サイドの勘に頼った見込み生産の問題だった。景気の変動によって過剰な在庫が発生し、それに対して適切な対処ができないままでいたのである。

 そこで業務の流れを徹底的に洗い出し、営業からの販売予測を元にして生産計画を立てることにし、正しい予測データを出すためにアルファシステム社の「遉(さすが)for Windows ver.2」という製造業向け統合管理システムを導入した。

フジ矢の生産管理システム構成図

 このシステムは、生産管理の基本機能である受注管理や出荷管理、在庫管理、生産計画、生産実績に加え、オプションとして購買管理、外注管理、品質管理などの機能を持っている。同社はこれに加え販売管理に伴う、売り上げ、請求、売り掛けの各管理機能もパッケージに含め、一部カスタマイズを行った。費用は約3000万円だった。

 このシステムが稼働開始したのが、04年の3月。在庫は3分の1に減少、売り上げは毎年15%前後伸ばしている。

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