言葉の認知度4割? 10分で分かる「Web2.0」(2/2 ページ)

» 2006年10月20日 08時51分 公開
[森川拓男,ITmedia]
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「Web2.0」を使ったネットビジネスへ

 Web2.0はビジネスの世界でも重要視されている。すでにネットビジネスにおいても「Web2.0企業」と呼ばれるものが登場しているのは周知の通りだ。

 Web2.0企業たるには、次の条件のうちのいずれかを満たしていればよい。それは先に挙げたWeb2.0の要素と結び付いている。

 まず、サービスの提供者であること。データソースをコントロールできること。ブログやSNSなど、ユーザーの無意識な参加を促せること。大きなコミュニティーを持っていること。ロングテールを理解していること。リッチで軽いこと。そして――プラットフォームを選ばないこと。

 この条件を満たす、Web2.0企業として、真っ先に思い浮かぶものは、やはり検索サービスだろうか。

 Googleは、Webページ(データ)をひも付けすることで、ネット上の情報を集約している。それだけでなく、キーワード連動広告により、企業とユーザーを結びつける働きも担っている。いまではさらに、地図やオフィスソフトなどを連動させて、一つのサービスでWeb2.0と呼ぶにふさわしい情報を包括、そして連携させる動きを見せているのだ。

 この背景には、企業からユーザーへというレベルのものではなく、社内のインフラ整備などもブラウザを介してアクセスできるよう整備されてきていることが相乗となっている。

 Web2.0と呼ばれるサービスは現在でも多数存在する。オンラインショップでいえば、複数のショップを連結している楽天市場やYahoo!ショッピングなども当てはまるし、取扱商品の枠を広げているAmazon.co.jpもWeb2.0企業と言ってよいだろう。Amazon.co.jpなどはWebサービスを利用することで、ほかのサービスとの連携も実現している。ブログサービスとの連携ではブログマーケティングにもつながっている(関連記事:「ブログマーケティングの実態――「お小遣い稼ぎ」は夢なのか?」)

 このほか、Web2.0と結び付くものとしては、iPodやiTunesなどの音楽配信、Webラジオなどのポッドキャスティングなどがある。これらは一つ一つがWeb2.0的なサービスだが、これらが結び付くことで、ネットビジネスとして成立していく。

「Web2.0」という言葉に対する格差は?

 さて、これらのWeb2.0企業のサービスを受けるユーザー側はどうだろうか。

 実はここに、一つの格差が生じているのが現実だ。

 先に挙げた調査で、Web2.0という言葉を認知し、理解しているのは30〜40代の男性ビジネスパーソンである、という結果が出ている。しかし、Web2.0のサービスを実際に利用している層はというと、10〜20代の若年層および女性だというのだ。

 Web2.0の真骨頂は何かといえば、「情報の集約」である。ネット上に点在する情報がタグなどでひも付けされ、一つの流れに集約されていく。これを行うのはWeb2.0のサービスであると同時に、個々のユーザーであるところが、Web2.0の肝となる。

 そうすると、Web2.0を理解しているビジネスパーソンは最も利用価値がありそうだが、活用している層からは少しズレるのが実態ではないかと思えてしまう。

 その理由の一つとして、多くのユーザーが「Web2.0」を意識せずに利用している、ということが挙げられる。若年層や女性層に利用者が多いブログがよい例だ。ブログという、Web2.0の一例を利用していながら、「Web2.0って何?」というユーザーも多いのだ。もちろんブログがWebそのものを総称するものではないが、その一端ではある。この結果、Web2.0の認知度は低いのにブログの認知度、利用度が高くなる。

 そしていまではWeb2.0という言葉が独り歩きを始めてしまい、ネット上にはWeb3.0などという新語も登場している。しかし、Web2.0は、ユーザーが意識することなく組み込まれていくものではないだろうか。すると、意識せずに利用している時点で目的を達しているということになる。

 実際にはWeb2.0を認識しているビジネスパーソンも、ビジネスやプライベートでブログなどを利用している人が増えているはずだ。しかし、意識せずに利用するユーザーが多いことにより、統計的には逆転現象が起きているように見える、というわけだ。つまり、意識的な格差があっただけなのである。

これからのトレンドは、脱「Web2.0」?

 ここで、ネットを通じたマーケティングについて考えてみたい。

 ひと昔前ならば、企業はWebサイトを構築したり、メールマガジンを発行すればよかった。しかし現在は、それだけではダメだ。いかにユーザー(顧客)を自社サービスに取り込むことができるか。そして、ユーザーが持っているブログなどのツールから、いかに情報を広めてもらえるのかがカギとなる。

 そうすると、重要になってくるのはWeb2.0的な考え方なのだ。それは、うまくツールなどを組み合わせてサービスを提供することで、ネットが可能にしてくれる。

 「URLを意識しなくなる日」でも筆者が書いたが、情報過多の現代にユーザーは面倒な収集手段を欲していない。従って、いろいろな手間がかかることをさせてしまっては、ユーザーはついてこない。

 「Web2.0って、Webの新しいバージョンなの?」という認識しかない人に、こういう概念なんだよ、と説明したところで面倒くさいとしか思わないだろう。しかし、そういうユーザーが利用してこそ、Web2.0の真価が発揮されるのだ。つまり、小難しいことをいってはダメであり、言葉一つ一つが敬遠される傾向にあるのも事実だ。

 いかにユーザーに意識させずに利用させ、それを収益に結びつけていくか。企業がWeb2.0を活用し、Web2.0企業へと変貌していく過程では、そのことが必須となる。

 一方でWeb2.0を掲げるサービスの中にも、オンライン詐欺の罠がひそんでいることも忘れてはならない(関連記事)。ここに注意しなければ、よかれと思って進めたことが、企業にダメージを与える結果にもなりかねない。巧妙に仕組まれた罠にはユーザーも気付かずにいるからやっかいなのだ。

 今後も、Web2.0的な新サービスは続々リリースされるだろう。しかし、それが「成功するか否かは、Web2.0を認識しない大多数のユーザーの手に握られている」と言っても過言ではないことだ。各企業はそのことを肝に銘じて、次のステージへと進む必要がある。

 そして、その次なるステージは「Web2.0」を超えたもの――いや、「脱Web2.0」とでも言うべきものではないだろうか。

 冒頭に記したように、Web2.0という言葉が一般に向けてあふれている現在、企業がWeb2.0的なものを利用するのはもはや当たり前。脱Web2.0とでもいうべき新機軸を方向性を示し、実行していく必要がある。しかしそれは、一部で呼ばれているような「Web 3.0」という呼ばれ方はしないだろう。

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