情報システムを最適化できるIT投資先とはシステムマネジメント最前線(2/2 ページ)

» 2006年11月01日 08時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]
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ITコストを削減するアウトソーシング

 そうした課題を解決する方法として注目されているのが、システム保守運用のアウトソーシングである。アウトソーシングは「外部委託」と訳されるが、その外部委託の形態やレベルはさまざまだ。例えば、自社内にコンピュータルームを持たず、データセンター事業者のハウジングサービスを利用する形態はすでに一般的と言えるだろう。

 しかし、データセンターだけ間借りして、保守運用は自社で行っている場合は、データセンターのファシリティに関する部分のコストは削減できたとしても、基本的な保守運用コストは自社内にシステムを置く場合と大差はない。これは、大企業が情報システム子会社に、自社システムの保守運用を委託するようなアウトソーシングの形態もいっしょである。

 そうした中、保守運用コストを削減するアウトソーシングとして注目されているいくつかのサービスが登場し、成長している。

 まず、挙げられるのが、業務アプリケーションをアウトソーシングするASP(Application Service Provider)型のシステムである。ちなみに最近は、SaaS(Software as a Service)型と呼ぶ、コスト削減を目的にWebサービスなどを利用してアプリケーションを提供する形態のサービスも登場しているが、利用料金を徴収し、ネットワーク経由でアプリケーションを提供するという意味で、SaaSとASPとの間で本質的な差はない。

 また、ハウジングサービスとともに保守運用サービスを提供するデータセンター事業者もある。この保守運用サービスの場合、サービスレベルはまちまちで、ハードウェア障害時の対応するだけのサービスから、業務アプリケーションを詳細に監視して障害予兆対策を行うサービスまである。このほか、システム構築を担当したSIerに、設計、開発からデータセンターの提供、保守、運用までを一括してアウトソーシングする例もある。

 アウトソーシングがコスト削減になるという理屈は、簡単だ。アウトソーシングサービスの事業者は、その事業そのものが自社のコアビジネスであり、専門家である。複数の顧客企業のシステムを並行して監視するため、顧客1社あたりのコストは小さくなる。そのため、一般企業が自社のシステム保守運用のためにかかるコストに比較すると、非常に安価なのである。もちろん、システム保守運用のノウハウが蓄積されているばかりでなく、24時間365日の運用体制も用意されており、コスト削減だけでなく、システム全体の可用性を向上させるという効果も期待できる。

専門的な部分だけを外部委託するという選択

 しかし、システムのアウトソーシングにはいくつかの問題点があることも確かである。とりわけ問題になるのが、機密情報の漏えいという点だ。いくらアウトソーシング事業者が堅牢なセキュリティ体制を用意していたとしても、機密情報を社外に置くことに対して拒否感を抱く企業は少なからず存在する。企業によっては、社外にデータを保存したり、委託先を含む外部の人間にデータを扱わせることを禁止するポリシーを設定している場合もあるだろう。

 そんな企業でもアウトソーシングできる部分がないわけではない。例えば、機密情報が格納されたデータベースのみをVPN経由で監視し、機密情報に触ることなく、システムの障害予兆やヘルスチェックなどを行うアウトソーシングサービスもある。特に、多くの企業では、データベースに関するスキルの高い技術者不足という課題を抱えており、こうしたアウトソーシングサービスは、コスト削減とデータベースの堅牢性向上を両立させるものとして注目されている。

 今後は、システム保守運用にかかるコストをアウトソーシングサービスなどを利用して上手に削減し、ビジネスの変化に対応する新規システム導入のために投資することが、企業システムの最適化につながることは間違いないだろう。

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