ディザスタリカバリ、対応時の現実とは?続・ディザスタリカバリで強い企業を作る(2/4 ページ)

» 2006年11月24日 11時47分 公開
[小川晋平,ITmedia]

まずは「安否確認」から

●命あっての事業継続

 ここまで連絡/情報伝達手段について述べてきたが、その前提条件として、自身の安全が第一である。命がなければ仕事どころではない。まずは自身の身の安全を確保することが大切だ。

●自分、家族、親戚、近所それから会社

 災害時には、第一に自分自身および同居する家族の安全確保を行った後、親戚や会社に自分や家族が無事であることを知らせ、心配を解消する。なお親戚などとの連絡には、災害伝言ダイヤル「171」が利用できる。この手段について日ごろから互いに話し合っておくことも有用だ。

 その上で、会社の定める安否確認方式に則って、自分が無事であることを会社に知らせる。

 阪神大震災のときは、住居の全壊によって命を落とされた方が多かった。大規模災害では、救助にあたる消防隊員や自衛隊員の数や初動にはどうしても限界がある。代わりに、初動時の近所同士の助け合いが多くの貴重な命を救ったという事実がある。そもそも、1日24時間のうち、業務時間よりも業務時間外の方が長いはずだ(中にはそうではない方もいるかもしれないが)。つまり一般に、会社でよりも自宅で被災する確率は高いと考えられる。そのような場合には、会社よりも、まずは自分たちの手で救える命を最優先するべきだろう。「もし自分が手伝っていたなら助けることができたのに」と後で悔やんで罪の意識にさいなまれないよう、自分たち家族の安全が確保できたならば、自分たちにできる最大限の助け合いを行うべきだ。

 被災地域の場合、まずオフィスへの出社を考えるべきなのは災害対策本部に当たる責任ある立場の人、災害時に特別な役割を与えられている人だ。それ以外の場合は後回しでよい。

フェイルオーバー意思決定前の調査

 事業の継続は至上命題ではあるが、フェイルオーバーおよびそこからの復旧には多くの負荷がともなうのも事実だ。実施の決定を下す前には、可能な限り多くの情報を収集し、適切に判断することが求められる。

●現地確認

 フェイルオーバーを行うかどうかの決定についてだが、大規模な災害の場合は現地の被災状況を見れば、どうすべきかは一目瞭然であったりする。例えば、マシンルームが火災に遭い、明らかに全体が復旧するまでには数カ月かかるであろうと見込まれるような場合は、即座にフェイルオーバーの判断が下せるであろう。

 したがって、現地の状況を確認できる担当者がいる場合には、身の安全を最優先した上で確認を行ってもらい、その結果に基づいて適切な判断を下すことが望ましい。

●DRサイトからの確認

 プライマリサイトのシステムやネットワークを監視していれば、被災時にはDRサイトに大量のアラートが上がってくることになる。このとき、DRサイト側から被災地の情報システム担当者に連絡を試みても、その直後は連絡がつかないことが予想される。そうした場合に備え、あらかじめ定めたチェックリストにしたがってかたっぱしから収集可能な情報を集め、万一誰とも連絡がつかなかった場合の強制フェイルオーバーに備えておく。

 災害が発生してから数時間経てば、マスコミなどを通じて災害の全容が徐々に明らかになってくるはずだ。DRサイト側ではテレビやラジオ、インターネットといった各種媒体を通じてできるだけ多くの情報を収集するように努める。

●その他拠点からの情報収集

 最初にアラートが大量発生した段階では、「プライマリサイト側に何かが起こった」のか「DRサイト側が陸の孤島になった」のかの切り分けができない。このため、プライマリ/DRサイト以外の他の拠点でも、何が起きているのかという情報を収集することが重要になる。本当の被災時には、周辺情報も含めて検討することで、問題がDRサイト周辺ではなくプライマリサイト側にあることが明確に分かってくる。

●災害対策本部はいずこへ?

 いったんフェイルオーバーを行っても、その構成が未来永劫続くわけではなく、いずれは元の状態に戻すフェイルバック作業が必要になる。しかしフェイルバック作業にも、逆同期などを行うため、けっこうな時間がかかることになる。そのため、フェイルオーバーの意思決定は慎重に行う必要がある。

 繰り返しになるが、フェイルオーバーの意思決定に当たるのは災害対策本部のIT担当者である。しかしDRサイト側では、そもそもどこに災害対策本部が設置されているのか、直接知る術を持たない可能性がある。そのため、あらかじめ災害対策規程などの中に、災害対策本部を設置した際の必須の連絡先として、DRサイトのシステム切り替え担当を加えておくと有効である。

 また情報システム側では無理でも、総務側で全拠点に衛星携帯電話を備えている場合もあるだろう。そのため、DRサイトのシステム担当は日ごろから、総務部門からすぐに情報を吸収できるような人間関係を構築しておくことが重要となる。

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