「Office 2007」のコラボレーション機能を徹底検証(2/2 ページ)

» 2006年11月30日 15時55分 公開
[Michael Caton,eWEEK]
eWEEK
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「OneNote」の統合

 Officeスイートの中でもOneNoteはあまりなじみのないアプリケーションだったが、Office 2007のリリースによって現状は変わるかもしれない。新スイートに含まれるOneNoteには、タスク管理以外にも、OutlookおよびSharePointと効果的な統合が見込めるポイントがいくつかあるのだ。

 前述したように、OneNoteにおける最も重要な改良点は、Outlookのカレンダーと連携できるようになったことである。「Office OneNote 2007」は(「Outlook 2003」および2007の)ツールバーアイテムを取り込み、会議の開催時間や参加者、議題などの情報を招集状から抽出して、その情報を「Notebook」ページに置いておくことが可能だ。OneNoteで管理される情報は、Outlookカレンダーの中のアイテムとリンクする形をとる。

 OneNoteには、「Windows SharePoint Services」を利用するよりも簡単にデータを共有したり、コラボレーションを実現したりする機能が、2種類搭載されている。Notebookを作成することで、複数のページを結合して共有できるのだ。これらのNotebookは、ローカルコピーやネットワークドライブに保存しているコピー、またはOffice SharePoint Serverのサイトから共有可能になっている。

 eWEEK Labは、Notebookの共有が比較的簡単に行えることを突き止めた。ローカルもしくはサーバを共有場所として指定するだけで、OneNoteは共有Notebookに対するリンクを張った電子メールを作成し、ほかのユーザーに送信した。

 この機能は、複数のコンピュータ上にあるNotebookのコピーを同期させるのにも応用できる。ローカルコピーを共有する場合は、ユーザーに適切なアクセス権を付与しなければならない。「Windows XP」デスクトップでこの作業を行うには、管理者権限が必要になった。Office SharePoint Server 2007では、特別なOneNoteドキュメントライブラリを作成すれば、これらの共有フォルダを管理できる。

 とはいえ、共有の過程はシームレスとは言い難い。バージョンの異なるドキュメントに変更を反映させるには、ユーザーはOneNoteの同期メニューアイテムを使用する必要がある。また、OneNoteには複数の変更点を調和させるメカニズムがないので、ドキュメントに新たな変更が加えられると、以前のものは上書きされて失われてしまう。OneNoteは、ユーザーがコンテンツを編集するたびにNotebookを書き換えるため、こうした機能の欠如が問題となる可能性がある。検証では、編集中はNotebookをオフライン状態にして、作業が終わり次第同期させるという回避策を採用した。

「Groove」を初めてバンドル

 Office 2007は、Microsoftが2005年3月に買収したGrooveから取得した同名製品「Groove」を初めて組み入れたスイートでもある。Grooveはオリジナルから大きく変えられているが、SharePoint Server、Windows SharePoint Servicesおよび「InfoPath」との連携に関して言えば、Officeとの相性は悪くないようだ。

 それでもやはり、Officeスイートに「Groove 2007」が含まれるというのは、少なくとも理論上は違和感がある。同スイートのアプリケーションは、SharePoint ServerおよびWindows SharePoint Servicesを介して互いに結びついているのに対し、Grooveが実現するコラボレーションは、ピア・ツー・ピア(P2P)ネットワークを利用した内向きのものだからだ。ドキュメントの管理が絶対に必要となる企業環境においては、Grooveのコミュニケーションインフラストラクチャをファイアウォールの内側に配置して管理性を高めたとしても、多少のリスクが残ってしまう。

 Groove 2007の機能の中核となるのはP2Pネットワークだ。このネットワークは、Microsoftが運用する公的なサーバか、企業がMicrosoftから購入し、社内で運用するサーバによって管理される。テンプレートを利用して独自のアプリケーションを作製したり、ローカルネットワークやインターネットを介して、そうしたアプリケーションをほかのユーザーと共有したりすることもできる。アプリケーションは、Grooveのパブリックディレクトリ(ローカルネットワーク上のパブリッシングサービス)が認識したユーザーが共有でき、電子メールで送信したり、(オフィスのPCから自宅のPCへといった)複数のコンピュータ間でやり取りしたりすることも可能だ。

 Microsoftは、Grooveで利用できるテンプレートの数を減らした代わりに、重要な機能を実現するテンプレートの拡充に力を入れている。

 こうしたコアなテンプレートには、ディスカッション、ファイル共有、各種フォーム、カレンダー、メモ帳、会議アプリケーションなどを作製するものがあるが、一部には重複も見られる。例えば、OutlookやExchange Serverを用いてカレンダーを共有するのは難しくないので、ほとんどのOfficeユーザーには共有カレンダーは必要ないだろう。

 もっとも、本来なら社内から利用するシステムに社外からアクセスし、プロジェクトごとの作業を行えるようにする点は、Grooveの長所の1つだ。Exchangeを利用したカレンダーの共有は組織内でしかできないが、Grooveでは、例えば外部のプロジェクトコンサルタントなどもこれを共同で使用できるのである。さらに、イベントの参加予定者リストや製品カタログの詳細といった、シンプルなデータベース情報を収集および共有するフォームアプリケーションを含んでいるのも、Grooveのメリットと言える。

 Groove 2007はInfoPathフォームをサポートしており、ユーザーは社内プロセス用に作ったフォームを再利用することができる。しかし、InfoPathサポートが完全なプラグアンドプレイになっているかどうかは、eWEEK Labによる検証では分からなかった。Groove 2007との互換性を確実にするには、何らかのフォーム編集が必要になるかもしれない。

 そのほか、Office SharePoint Serverドキュメントライブラリに対応している点も、見逃せない特徴である。これによりGrooveユーザーは、Grooveクライアントを使ってSharePointドキュメントをオフライン化し、編集を加えられるようになった。同機能を活用すれば、SharePointサイトを外部に公開したり、ネットワークに対するアクセス権を与えたりせずに、パートナー企業をドキュメントの作成および編集作業に参加させることができる。社員はファイアウォールの内側からSharePointコンテンツにアクセスできるが、これを一種のプロキシとして、Grooveネットワーク上で同コンテンツを外部ユーザーと共有することも可能だ。この方法は、ユーザーが自宅PCなどからSharePointコンテンツにアクセスする際にも使える。

 こうした共有システムは認められないが、コラボレーションツールとしてのGrooveには価値があると考えているIT管理者は、Grooveネットワークの管理を厳格に行わねばならないだろう。Grooveネットワークを社内で運用および管理するためのツールには、Microsoftの「Groove Enterprise Management Server 2007」や「Enterprise Relay Server 2007」などがある。Groove 2007をインストールする際に、Enterprise Relay Serverを経由した接続のみを許可するよう設定することもできる。

 Groove 2007は、Officeスイートの「Microsoft Office Enterprise 2007」および「Microsoft Office Ultimate 2007」エディションにバンドルされる予定だ。コラボレーション環境を短期間で構築したいと考えているが、IT部門を持っていないため支援が得られない中小企業のニーズを満たす意向は、どうやらMicrosoftにはないらしい。Grooveは単独製品としても販売されており、1ユーザー当たりの価格は229ドルとなっている。

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