拡大するEMC インフラ総合ベンダーとして勝負

売り上げに見るEMCの業容は、既にソフトウェア・サービスが全体の半数を超え、かつてのストレージ専業ベンダーとしての面影は薄れつつある。

» 2006年12月13日 17時55分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 近年、ソフトウェアベンダーを立て続けに買収しているストレージベンダーのEMC。売り上げに見る同社の業容は、既にソフトウェア・サービスが全体の半数を超え、かつてのストレージ専業ベンダーとしての面影は薄れつつある。

 ハイエンドストレージのSymmetrixをフラッグシップとするEMCは、2001年にジョー・トゥッチCEO就任以来、ハードウェア依存のビジネスモデルの変革を目指し、2003年から数多くのソフトウェア企業を買収し続けてきた。Oracleと争って手に入れたというコンテンツ管理のDocumetumをはじめ、サーバ仮想化のVMware、最近ではRSA SecurityなどがEMCの傘下に入った。

古谷幹則氏 MCジャパン執行役員マーケティング兼パートナーアライアンス統括本部長の古谷幹則氏

 EMCジャパン執行役員マーケティング兼パートナーアライアンス統括本部長の古谷幹則氏は「(情報インフラベンダーとしての)基礎が固まりつつある。来年以降は、インフラ総合ベンダーとして勝負できる」と話す。

Documentumを中心とした情報管理の世界の構築

 総計70億ドルにおよぶ買収の背景には、ILM(情報ライフサイクル管理)戦略がある。「ILMの道具立てとして、EMCの製品だけでは無理があった。業界のスピードについて行くには、買収が効率的だった」と話すのは、EMCソフトウェアグループ本部長の安藤秀樹氏。

 情報の生成から廃棄までをライフサイクルに従って適切に管理するILM。しかし現実は、性質の異なる企業内のすべての情報を1つの管理大系に収めるようとするのは難しい。「ビジネスのルールを無視して、IT側の都合で管理されてしまう」ことになりがちからだ。

 それには「リッチなメタデータで情報のライフサイクルを管理する必要がある」(安藤氏)。EMCでは、その受け皿としてDocumentumを位置付け、メタデータの共通管理基盤に育てていく戦略だ。もともと情報の7割を占めるといわれるオフィス文書など非構造化データをターゲットにストレージ容量の拡大を狙ったDocumentumの買収だったが、現在では情報管理基盤としての役割を増大させ、各種機能を付加。ビジネスプロセスの最適化を可能にするProactivityや、Captiva、Authnticaなどの買収は、この延長上にあるという。

EMCの買収 EMCが近年買収した企業

 「情報を中心とした切り口でのセキュリティも可能にする。セキュリティには、ファイアウォールやウイルス対策ソフトなどいろいろあるが、ハガキのように情報自体が裸では意味がない。封筒に入れ、鍵もかかっている」(古谷氏)という状態を可能にするため、手に入れたのがRSA Securityと説明する。

モデルベースのシステム管理を持ち込む

 同時に、EMCはシステム管理の世界も見据えている。これまた買収で手に入れたSmartsを武器にモデルベースのリソース管理を持ち込もうとしている。nLayersと合わせてアプリケーションからインフラまですべてをモデルベースで管理を可能にしようとしている。

 Smartsは、DMTF(Distributed Management Task Force)が定めた規格CIM(Common Information Model)によるデータモデルを利用し、システムのネットワーク全体をモデル化。複数レイヤの関係性を認識しながら、ネットワーク上のオブジェクトと障害の関連性を把握できる。原因解析エンジンが自動的に障害パターンから原因を検出するという。


 業容の拡大傾向にあるEMCだが、同社は既存のストレージシステムと買収したソフトウェアの相乗効果について、明確にしていない。ただ、ストレージだけを持って行っても顧客の課題に対応しきれないということだけは確かなようだ。

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