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» 2006年12月14日 11時00分 公開

MSNに未来はあるか?

Microsoftは新しい「Live」構想に重きを置いてはいるものの、MSNは依然として、同社のコンシューマー向けオンライン戦略において重要な役割を果たしている。

[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 米Microsoftは新しい「Live」構想に重きを置いてはいるものの、MSNブランドは完全に切り捨てるにはあまりに貴重だ。実際、幾つかのMSNサイトは、それぞれのカテゴリでトップクラスのトラフィックを誇っており、「オンライン広告収益の拡大」というMicrosoftの目標にとって重要な存在となっている。Microsoftはこの先、MSNの各サイトをより良質な優れたコンテンツとリンクさせることで、各サイトのユーザーがほかのMSNサイトでももっと多くの時間を費やすようにしたい考えだ。さらに同社は、広告主がより的確にターゲットを絞り込み、特定の人口統計学上のグループを対象に広告を提供できるようにもしたいと考えている。またMSNは、インターネットアクセス事業のための新しい広告支援型ビジネスモデルの中心となる可能性もある。

MSNブランドの現状

 MSNはほぼ10年間にわたり、Microsoftのコンシューマー指向のWebサイトおよびオンラインサービスの包括ブランドだった。だが、2005年10月以降、Microsoftは多くのMSNサイトを「Windows Live」あるいは単に「Live」という名称に変更している。例えば、Hotmailは「Windows Live Mail」となり、MSN Messengerは「Windows Live Messenger」となり、MSN Searchは「Live Search」(“Windows”は付かない)となっている。また、オンライン三行広告サービスの「Windows Live Expo」など、Microsoftの新しいコンシューマー向けオンラインサービスの大半はWindows Liveブランドを使用している。さらに、同社が四半期決算を報告する事業部構成の変更に伴い、これまでMSN部門と呼ばれていた事業部門はオンラインサービスグループという名称に変更されている。

 それにもかかわらず、Microsoftは依然として、20種類以上のWebプロパティ、モバイルユーザー向けの幾つかのオンラインサービス、および同社のすべてのインターネットアクセスサービスにMSNブランドを採用している。

MSNブランドとLiveブランドの区別

 2006年2月に長期休暇から復帰し、MSNブランドのすべての事業を統括しているMSN担当ジェネラルマネジャーのジョン・ニコル氏によれば、MicrosoftはMSNブランドとLiveブランドを以下のように区別している。

「編集者」対「ユーザー」

 多くのMSNサイトでは、コンテンツはMSNかあるいはコンテンツパートナーが雇った編集者によってコンパイル、作成されている。一方、LiveサイトやWindows Liveサイトでは、ユーザーが各種のオンラインソースからコンテンツを探し出し、アグリゲート(集約)できるようになっている。例えば、Windows XPでInternet Explorer 7のデフォルトのホームページとなっているMSN.comには、選り抜きのパートナーサイトからMSNが収集した見出しが含まれているが、新たにVistaでInternet Explorer 7のデフォルトのホームページとなるLive.comでは、ユーザーはRSSフィードを使ってあらゆるサイトやサービスから見出しをアグリゲートできる。

「ポータルサイト」対「プラットフォーム」

 LiveサイトやWindows Liveサイトの重要な長期的目標は、ほかのWebサイトやソフトウェアがアクセスし、再結合できるようなサービスを提供することだ。MSNには、そうした目標はない。MSNサイトは単に、「ユーザーに定期的にある程度の時間アクセスしてもらうための一揃いのポータルサイト」として提供されている。

 だが、こうした区別は厳密ではない。例えば、「MSN Travel」には最近、プロの編集者ではなくエンドユーザーが投稿するコンテンツが追加されている。また、動画共有サービスの「Soapbox on MSN Video」では、同サービスからサードパーティサイトに簡単にビデオコンテンツを再投稿できる(つまり、同サービスはどちらかと言えば、Liveタイプのオンラインプラットフォームとなっている)。そして、MSNブランドでもWindows Liveブランドでも、ほぼ同様の比較ショッピングサービスが用意されている。そのうえ、Microsoft自身のWebサイトでさえ、必ずしも常に正しいブランド名を使っているわけではない。例えば、Microsoftオンラインサービスのホームページjoin.msn.comでは、検索エンジン「MSN Search」の新版として「Live Search」が始動して1カ月以上が経過してからもなお、依然として、MSN Searchが宣伝されていた。

 こうしたブランディング戦略における一貫性の欠如は、Microsoftのオンラインサービスに悪影響を及ぼしかねない。例えば、Microsoftのマッピングサイトを利用したいと思っても、そのサイトが「Live Local」という名称で呼ばれ、URLがlocal.live.comであるということは、なかなか推測できるものではない。そして、こうした一貫性の欠如は、広告主の間にも混乱を引き起こすだろう。ブランディング戦略は今後、さらに変更されることになりそうだ。そして、おそらく、一部の重複サービスは削除されることになるだろう。

MSNの目指すところ

 Nicol氏は、MSNの目標として以下の点を挙げている。

スティッキネス(サイト内の滞在時間)を高める

 幾つかのMSNサイトは、それぞれのカテゴリでトップクラスのトラフィックを誇り、何百人ものユーザーに利用されている。例えば、以下のとおりだ。

  • MSN.comのホームページは2006年8月に4400万人近くのユニークビジター数を獲得し(Nielsen/NetRatingsの調べによる)、最近、市場シェアを数ポイント拡大している。一方、AOLやYahoo!といった競合他社のシェアは減少か、横ばいとなっている。
  • MSNBCは2006年8月に2700万人近くのユニークビジター数を獲得し、常に、最もアクセス数の多いニュースサイトとなっている。
  • CNBC on MSN Moneyは2006年8月に1200万人近くのユニークビジター数を獲得し、金融サイトのカテゴリでYahoo! Financeに次ぐ第2位となっている。
  • MSN Autosは2006年8月に600万人以上のユニークビジター数を獲得している。同サイトは、日刊でニュース記事を提供するオートショーの期間中はしばしば次点の3倍近くのトラフィックを記録している。

 だが一方、MSNはライバル各社の多くと比べ、ユーザー当たりのページビューが少ない点はNicol氏も認めるところだ。つまり、多くのユーザーはある1つの特定のMSNサイトにはアクセスしているが、そのサイトをより広範なMSNネットワークの一部としては捉えていないということだ。あるいは、ほかのMSNサイトのコンテンツは評価していない、とも言えるかもしれない。MSNは、MSNサイト間、およびMSNサイトとWindows Liveサイト間のインテリジェントな統合により、こうした状況を変えたいと考えている。例えば、動画共有サイトのSoapboxにユーザーを導くために、MSNは単にページ左側にあるナビゲーションバーに新しいリンクとして加えるだけでなく(ナビゲーションバーでは、20種類以上あるそのほかのリンクの間に埋もれてしまうだろう)、ほかのMSNサイトに再投稿できるよう、各サイトと関連性のあるSoapboxビデオを選択していく方針だ。例えば、自動車に関する興味深いビデオであれば、MSN Autosのホームページに投稿するといった具合だ。またNicol氏は、MSNサイト全体でより興味深い一貫性のある編集基調を確立すべく、編集者の増員を図りたい考えという。ただし、MSNコンテンツの多くはパートナー企業によって提供されているため、その実現は簡単ではないだろう。

広告のターゲットを絞る

 オンラインサービスグループの重要な目標は、広告主が「興味を抱いている買い手」にターゲットを絞って広告メッセージを提示できるようにすることだ。そうすれば、結果的に、広告主の売上も増加し、Microsoftも広告料を値上げできることになる。大半のMSNコンテンツサイトは特定のテーマを扱っているため、その点でMSNの存在は特に重要となる。例えば、カーステレオのメーカーであれば、一般的なWebポータルよりもMSN Autosサイトに広告を出したほうが、より購入見込みの高い顧客に到達できる。

評判を回復する

 多くのユーザーや潜在的な広告主は、MSNブランドに対して否定的な印象を抱いている。これは一部には、MSNのインターネットアクセス事業における過去の問題に起因するものだ。2001年の消費者レポートによれば、MSNのインターネットアクセス事業の顧客満足度は大手ISPの中で最低となっている。さらにMSNブランドには、使い古された感もある。MSNというブランドはこれまで、インターネットアクセス、無料およびサブスクリプション型のWebサイトやオンラインサービス、モバイルユーザー向けの各種のサービスセットなど、実にさまざまなシーンで用いられてきた。MSNの評判を回復すべく、「今後は単に新しい技術を組み込むよりも、エンドユーザー体験にフォーカスする」とNicol氏は明言している。例えば、かつてMSNのホームページのデザインが変更された際には、最先端のWeb技術を使用しているという点は評価されたものの、ユーザーの間では新しい設計の評判が悪く、同ホームページの市場シェアは急減した。今後は、MSNサイトの編集コンテンツの質を高めることも重要となるだろう。

アクセス事業を見直す

 MSNのダイヤルアップインターネットアクセス事業は、黒字ではあるものの、ユーザーのブロードバンドへの切り替えが進むなか、3年連続で下降傾向にある。Microsoftはある時期、DSLアクセスの提供を検討したこともあるが、電話会社からのDSLインフラのリースコストが高すぎて採算が取れないことをすぐに理解した。そのため、アクセス事業の収益は減少の一途をたどっている。同社のダイヤルアップ事業の売上高は2003年会計年度に11億ドル以上の売上高を達成して以来、着実に減少傾向にあり、2006年会計年度(2006年6月30日締め)には前年比28%減の約7億万ドルとなっている。MSN Premium(米国内のブロードバンドユーザー向けのサービスで、専用のWebブラウザと電子メールクライアントを含む)、ウイルス対策、ペアレンタルコントロールといったサブスクリプションサービスの売上高も、2006年会計年度には2億5000万ドルと前年比でわずか9%の成長に留まり、不振を払拭できずにいる。なお、まだ詳細を発表する段階ではないが、Microsoftは現在、広告支援型の無料アクセスも含め、インターネットアクセス事業の採算性を確保するための方法を各種検討中だ。

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