「大変意味深い一年になった」インテル吉田社長が2006年を総括

12月5日、インテルは記者会見で2006年を総括し、2007年の展望を示した。

» 2006年12月16日 07時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 12月15日、インテルは都内で定例記者会見を行った。代表取締役共同社長の吉田和正氏が2006年における同社の活動を総括した。ゲストとしてエヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)代表取締役社長の小林忠男氏が講演し、これまでの公衆無線LANインフラ発展を振り返り、その将来像を語った。

「2007年に向けてさらなる挑戦を」インテル吉田社長

 「1月10日にはリニューアルされた新ロゴを発表しました。このロゴにつけられた『さあ、その先へ。』(英語では『LEAP AHEAD』)という言葉は、一般消費者やビジネスユーザー、さらには日本全体に対し、インテルが何を実現していこうとしているかを示すものです」と吉田氏は語った。

 インテルにとって、2006年は「新製品の当たり年」と言われる。プロセッサ製品群はノートPC向けから64bitまでの全領域でデュアルコア化が完了した。さらに一部ではクアッドコア製品も登場し、コア多数化の流れは今後もさらに進む見通しだ。

 プラットフォームのブランドとしては、コンシューマー向け「Viiv テクノロジー」とビジネス向け「vPro テクノロジー」の2つが新たにリリースされている。そして、ノートPC向けプラットフォーム「Centrino」は、にデュアルコアCPUを盛り込んだ「Centrino Duo」に発展した。

 「Centrino Duoの登場で、もはやデュアルコアは当たり前の時代になったと言えるでしょう。ノートPCも、メールやWebだけでなく、その間に見えない部分での処理を行うことが増えてきました。デュアルコアのパフォーマンスは、情報処理産業だけでなく多方面に恩恵をもたらすものとなります」(吉田氏)


インテル代表取締役共同社長の吉田和正氏


 「企業では特にセキュリティと運用性が求められます。それらをプラットフォームソリューションとして提供するのがvPro テクノロジー。これは、企業向けコンピューティングの大きな変化につながるのではないかと思っています。2006年はシンクライアントとリッチクライアントの方向に大きく分かれてきたと考えています。企業の生産性を上げるためには、まず個人の生産性を高めるというのがインテルのアプローチ。個人が持っているクライアントをできるだけ活用していける環境を用意して、個人の生産性を高め、そして最終的に企業全体のパフォーマンスにつなげていく」(吉田氏)

 また、新しい分野としてヘルスケア分野に進出した。2006年にはデジタルヘルス事業部を設立し、医療用プラットフォームの開発・検証を行ったほか、実際の病院と共同で医療のネットワーク化を推進している。

 「亀田総合病院という素晴らしい病院と知り合うことができました。これからの患者中心の医療において、ITをどのように使っていくか、ITの有効活用によって得られた時間を先生方がどのように患者対応に振り分けるか、といった考えで取り組んでいきます」(吉田氏)

 そして吉田氏は、次のように締めくくった。

 「2006年は多くのマイクロプロセッサを発表した1年になりました。2007年は、マルチコア化のさらなる加速、プラットフォームのさらなる進化を進め、利用形態もさらに広げていく方針です」

「2007年はワイヤレスブロードバンド時代の幕開けに」NTTBP小林社長

 NTTBPは、NTTグループ4社(東日本、西日本、ドコモ、コミュニケーションズ)が出資する公衆無線LAN設備事業者。もとはNTT東日本の子会社としてスタート、公衆無線LANサービス「無線LAN倶楽部」を提供していたが、後に他の3社からも出資を受け、2005年12月20日で無線LAN倶楽部のサービスを終了した。以後は共用型無線LAN設備を構築して各事業者に提供すると同時に、無線LANを活用した新たなワイヤレスブロードバンドサービス、アプリケーションを開発することを目的に活動している。NTTグループにおけるワイヤレスブロードバンド環境の牽引役という位置づけだ。

 「4年前のちょうど今ごろ、『無線LAN倶楽部』のサービスを開始したとき、わずか6つの駅に15のアクセスポイントしかありませんでした。今から考えると、よく月額1500円でやったものだと思います」と、小林氏は初期の公衆無線LANサービスを振り返る。それが今や、「NTTBPが資産として持つ共有基地局は2006年11月時点で約3300となり、来年3月頃にはそれが約6000になる。グループ全体としては約1万アクセスポイント」(小林氏)というまでに成長した。

 また、インフラの拡充と軌を一にして端末も増えてきた。

 「4年前にはノートPCや一部PDAに無線LANカードを装着して使っていただくしかありませんでした。ですから、インテルがCentrinoで無線LAN機能をノートPCに標準搭載してきたのは非常に嬉しいことでした。私どもにとって強い追い風になったことは間違いありません。それに伴って、スマートフォンや携帯用ゲーム機など、無線LANを標準で搭載している端末も登場してきています。ゲーム機も、私どもがサービスを開始した頃には『できたら面白いよね』というくらいの願望でしかなかったものでした。本当に予想以上に無線LAN搭載端末が増えてきています」(小林氏)


NTTBP代表取締役社長の小林忠男氏


 「NTTBPとインテルとは、いろいろな新しいチャレンジを3年以上も一緒に取り組んできました」と小林氏は言う。つくばエキスプレスで実現した電車内無線LAN環境も、そのチャレンジの1つだ。そのチャレンジの結果、無線LANのエリアは「点から線」になった。

 「さらに今後は、線から面へと拡大していきます。『芝浦アイランド』や『東京ミッドタウン』などは、建設会社が無線LANインフラの設備投資を行って区域全体をカバーしようとしています。NTTBPは、そのインフラの運用を行います。公衆と自営を融合したような、新しいビジネスモデルですね」(小林氏)

 小林氏は、インテルの無線LANへの取り組みを高く評価している。

 「来年以降は、WiMAXやIEEE802.11nなど無線LANの新規格、端末ではウルトラモバイルPCも本格的に出てきます。インテルはWiMAXフォーラムでも中心的に活動していますし、12月6日にはマルチバンドのWiMAX/Wi-Fi/HSDPAを1つに統合したチップの設計を完了したと発表しています。ますます公衆無線LANの価値、重要性が高まってきて、いよいよ来年は本格的なワイヤレスブロードバンド時代の幕開けになるのではないかと考えています。そのチャンスを有効に生かしていきたいものです」(小林氏)

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