「この10年で最も大きな変革」――インテル、動く「vPro」を披露

インテルは10月11日、「インテル vPro テクノロジー・コンファレンス」を開催し、企業向けの新たなプラットフォーム「vPro」の利点を改めて説明した。

» 2006年10月11日 23時38分 公開
[ITmedia]

 インテルは10月11日、「インテル vPro テクノロジー・コンファレンス」を開催。企業向けの新たなプラットフォーム「vPro」のデモンストレーションを通じてその利点を改めて説明するとともに、パートナー各社の対応製品群を紹介した。

 vProは、同社が4月に発表した企業向けの新たな技術ブランドだ。7月に投入した「Core 2 Duo」プロセッサやQ965 Expressチップセット、ギガビット対応のネットワークコネクタといったハードウェア的な要素に加え、管理性を高める「Intel Active Management Technology(Intel AMT)」や仮想化技術の「インテル バーチャライゼーション・テクノロジー(Intel VT)」、ネットワークフィルタなどを組み合わせることにより、クライアントPCの管理を支援し、TCOの増大やセキュリティといった企業IT部門が抱える課題の解決を目指している。

 コンファレンスの基調講演において、米Intelのデジタル・エンタープライズ事業本部デジタルオフィス事業部長、グレゴリー・ブライアント氏は「vProは、この10年間のIntelの発表の中で最も大きな変革である」と述べた。

米Intelのグレゴリー・ブライアント氏

 同時に「これはただのチップ以上のものである」とも強調。同社が提供するIntel AMTやIntel VTに加え、パートナー各社が提供する製品群を組み合わせることにより、IT部門がいま抱えている「現実の問題」を解決すると述べた。

 なお、このコンファレンスと同時に、パートナー各社もvPro対応製品を披露。NECやデル、日立製作所、日本ヒューレット・パッカード、富士通、レノボ・ジャパンといったOEMパートナーがvPro搭載PCのリリースを表明したほか、ソフトウェアベンダーとしては日立製作所がシステム管理ソフト「JP1」で、またクオリティも「QAW/QND」でvProをサポートすることを明らかにした。

運用管理の効率化をデモ

 vProが直接的にもたらすメリットは、低消費電力と高パフォーマンスの両立だ。同時に、Intel VTを活用した「仮想アプライアンス」やネットワークフィルタをハードウェア的に実装することで、端末のセキュリティを強化する。さらに、資産管理やリモートからの障害対応作業も容易にしていくという。

 コンファレンスのデモでは、vPro搭載PCとMicrosoft Systems Management Serverを組み合わせ、運用コスト削減とセキュリティ強化を支援する例が示された。

 現行のPCでは、電源が落ちていたり、管理ソフトウェアのエージェントがインストールされていない端末については、存在が把握できないし、たとえ障害が起こっていてもリモートからの修復が困難だ。これに対しvPro搭載端末と対応管理ソフトを組み合わせれば、ブートできない状態の端末についてもBIOS設定を変更したり、あらかじめ用意していたイメージを元にリモートから修復を行うといった運用が可能という。

電源の入っていないPC、立ち上がらないPCについてもリモートからBIOSレベルで操作し、障害回復を行うデモ

 つまり、障害が発生した場合に担当者が現場に足を運び、オンサイトで修復を行う手間とコスト、時間を省くことができる。この結果「おおまかに、PCオペレーションコストを50%は削減できる。あるパイロット環境では80〜90%ものコストを削減できた」(ブライアント氏)

 セキュリティ面では、企業が定めたポリシーを徹底できるほか、マルウェア感染によって不審なトラフィックを吐き出す端末を特定し、ネットワークから切断、隔離するといった運用が可能になる。1台の感染端末からネットワーク中にマルウェアが蔓延するといった事態を未然に防ぐことができるわけだ。また、パッチ適用の手間を省くという意味では「ある環境ではvPro対応PCを活用することで、パッチ適用に要する時間を85%削減できた」(同氏)という。

 三菱東京UFJ銀行のシステム部執行役員、システム部長の根本武彦氏は、ユーザーの立場からvProに対し、IT資産の保護に加え、コスト削減や運用管理の効率化に期待していると述べた。

 同行では、世界各地に分散した拠点で30万台を超えるPCを運用している。しかも「大半がリモートサイトにあるため、管理に大変手を焼いている。制約のある中でプログラムの配布などを行わなければならないほか、障害に備え、短時間で現時に駆けつけられる体制をコストをかけて構築しているのが実情」(根本氏)。vProの活用により、この膨大な数の端末の効率的な運用、管理が可能になるうえ、約20億円の運用コスト削減につながると期待しているという。

 ブライアント氏は、今後もvProテクノロジを拡張していく方針も示した。1つの方向性は、モバイル端末への展開。クアッドコア化も当然視野に入っている。また、Intel VMを活用した仮想アプライアンスにさまざまな機能を搭載していくことも考えられるという。

 「たとえば、仮想アプライアンスにIDSの機能を持たせることで、セキュリティのさらなる改善を図ることができる。データセンターに置かれていたIDSをPC1台1台に搭載することで、同じメリットをもたらすことができる」(同氏)。すでにレノボやシマンテックが仮想テクノロジを活用したセキュリティ製品の提供を表明しているほか、「ソフトフォンを組み込んでVoIPに利用するなど、さまざまなイノベーションが期待できる」とブライアント氏は語った。

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