Microsoftの「Expression」を支える男、元ILMのフォレスト・キー氏(2/2 ページ)

» 2007年01月22日 17時04分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK
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世界変革のビジョン

 キー氏によると、MacromediaでFlashとFlash Videoの開発に携わったことで、インタラクティブ機能、マルチメディアおよびWebへの興味がそそられたが、何かもの足りなさを感じていたという。

 「わたしがMicrosoftに関心を持つようになったのも、そのためだ。世界を変革するという同社のビジョンに魅力を感じたのだ」とキー氏は話す。

 キー氏は昨年12月のブログの記事の中で、2003年のMicrosoftのPDC(Professional Developers Conference)から戻ったMacromedia Flashチームの技術マネジャーから、Microsoftが目指す方向を示したデモの話を聞いたことで、もっと詳しく知りたいと思うようになったと述べている。

 「PDCのデモでは、Adobe After Effectsを用いて『XAML』(Extensible Application Markup Language)という新しいマークアップ言語が出力され、次にWindowsがハードウェアレンダリング機能を使ってリッチなマルチメディア表現のレンダリングをリアルタイムで魔法のように実行したそうだ」とキー氏はブログに記している。

 「After Effectsのヘビーユーザーとしてのわたしのスキルと、今後リリースされるWindows技術を組み合わせれば、現実のアプリケーションでリアルタイムのデザインエクスペリエンスを実現できるかもしれない――わたしはこの考えに夢中になった」(同氏)

 WPF(Windows Presentation Foundation)および「WPF/E」(Windows Presentation Foundation Everywhere)のコードネームで呼ばれるMicrosoftの技術は、「開発者/デザイナーのコミュニティーがWindowsおよびWeb用にリッチなコンテンツエクスペリエンスを作成する手段を提供する基盤技術」であるとキー氏は説明する。一方、Microsoft Expressionスイートに含まれるツール(「Expression Web」「Expression Blend」「Expression Design」「Expression Media」)は、相互に補完する機能を提供することによりアプリケーションの開発を可能にするという。

 さらにキー氏は、ユーザーエクスペリエンスにフォーカスするチームを同氏が築き上げることができたのはMicrosoftのおかげだとしており、また、個人の貢献を認める同社の姿勢も評価している。同氏のチームには、クリエイティブデザイナー、研究者、映画専門家、ソフトウェア開発者、Webサイトデザイナー、印刷専門家、さらにはロックミュージシャンなど、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が含まれる。

 しかし彼らは全員、一致団結して、開発者とデザイナーとの間のワークフローを改善する次世代のデザイナー向けプラットフォームをMicrosoftが開発するのに貢献しているという。

 このような意識は、Expressionツールで芽生えたばかりだ。「われわれにとってExpressionはまだ序の口だ」とキー氏は付け加える。

 MicrosoftがExpressionで目指している総合的なビジョンの一部は既に、バージョン1.0製品に含まれているようだ。これらの製品の中には、出荷されているものもあれば、プレビュー段階のものもある。しかし同社のビジョンを完全に達成するには、キー氏が話している10年計画のうちの何年か必要になりそうだ。言い換えれば、さらに数年にわたってより多くのスタッフがプロジェクトに携わる必要があるということだ。

 「われわれは毎年、採用人数を増やしている。現時点で、70のポジションのスタッフを雇い入れる必要がある」とキー氏は語る。

 「われわれの目標を達成するには、Microsoftは全体として現在の2倍の規模の企業に成長する必要があると考えている。次々と人を雇い入れても追いつかないのだ」(同氏)

 Expressionツールは、MicrosoftのCTP(Community Technology Preview)プロセスを利用して開発された技術である。CTPは透明性の改善を目指した同社の取り組みの一環となるもの。

 「わたしが以前働いていた業界では、未完成のものを公開するということは決してなかった」とキー氏は話す。

 しかし同氏によると、Expressionツール、特にBlendは、CTPからのフィードバックに基づき、方向性と実装の両面で大幅な変更が行われたという。

 MicrosoftがExpressionツールのExpressバージョンの提供を検討する可能性はあるかとの質問に対し、デザイン技術の提供に関しては、Microsoftはピラミッド方式のアプローチを採用するつもりだ、とキー氏は答えた。Microsoftの開発ツールセットであるVisual StudioのExpressバージョンは、ホビーイストや学生、開発初心者などを対象とした軽量版ツールである。

 「ILMのスタッフのように、非常に高度なニーズを持った人々がいる一方で、ツールでそれほどの機能を必要としない人もいる。このピラミッドの下に行くほど、ボリュームが大きくなる」とキー氏は話す。

 さらに同氏は、将来的には、エンタープライズ開発システムのMicrosoft Visual Studio Team Systemでもデザイナーが重要な役割を果たすようになるとみているという。

 また、Microsoftがデザイン分野で影響力を獲得するには、コミュニティーにアプローチする必要があるとキー氏は考えている。Microsoftは4月に、ラスベガスで第2回「Mix」カンファレンスを開催する予定だ。同社は、昨年のカンファレンスについて、「Web開発者、デザイナー、ビジネスリーダーの間で72時間にわたって行われた対話」と表現している。

 影響力の拡大を目指したMicrosoftの継続的な取り組みについて、キー氏は「今後もMixのようなイベントをさらに増やし、さまざまな分野の人々を結集するつもりだ」と話している。

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