上司や同僚だけじゃない。IMがつなげる未来のコミュニケーションビジネス向けのメッセンジャー BIZ IM市場の幕開け(第5回)(2/2 ページ)

» 2007年01月25日 11時51分 公開
[渡邉君人(Qript),ITmedia]
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IMが創造する「Web 2.0」時代のコミュニケーション

 先ほどコンシューマーの間では、オンラインゲームでもIMの機能がよく利用されていると触れた。オンラインゲームは、2000年頃から新しいゲームのスタイルとして台頭し始めてきた。PCがあれば、ゲーム機やソフトを持たなくても、Webからソフトをダウンロードするだけで、まったく知らない相手と一緒にゲームを楽しむことができる。

 昔のように対戦相手が自分の隣にいなくても、相手をインターネット上で見つけられる。そのときに相手がオンラインかどうかを確かめたり、テキストメッセージを送って話しかけたりする際に利用するツールがIMだ。この道理を用いれば、ほかのサービスでも今後もさまざまなシーンでIMが利用され、既存のサービスがよりリアルタイム化し、インターネットユーザーが多くの恩恵を享受できる可能性があるのではないだろうか。

 例えば、みなさんがネットサーフィンをしながら気になるサービスや商品を見つけたとき、ちょっとした疑問や質問があれば、電話やメール、Webの問い合わせフォームなどを利用して企業に尋ねるのではないだろうか。しかし、「電話やメールで問い合わせるのは少し面倒だな」、と思うことはよくあるだろう。しかも、電話をかけたがいつまでもつながらずに長い時間待たされたことや、メールをしても半日、もしくは1日以上も返信を待たされることがよくある。

 これがサービスや商品に対するユーザーの購買意欲を喪失させる原因となり、企業にとって新規顧客を獲得するチャンスを逃していることが少なくない。もし電話で待たされることもなく、メールを1日待つこともなく、簡単なテキストベースでやり取りができるとしたら、どうだろうか。企業のサポート担当者が、リアルタイムに探している商品のURLを教えてくれたり、質問に答えてくれたりする。このようなIMを利用したヘルプデスク、コンシェルジュ機能が、これからの時代のリアルタイムな顧客サービスの一つの在り方だと考えられる。

 当社の顧客の例では、テキスタイル(生地)販売のECサイトをもつ会社が、ヘルプデスクとしてのIMの導入を検討している。他社ではあまり見ることできない、こだわりの特別な柄・織などの商品を抱えているのが同社の強みであり、問い合わせは全国各地から寄せられる。サイトから好みの商品にたどり着ければよいが、リクエストの多い利用者は電話で好みを説明し、運営者が該当しそうな生地のサンプルを配送したりもする。電話で問い合わせをする顧客側にとっても、特に遠方の場合は通信費も掛かる。

 そこにIMを利用すると、例えば「オーダーメイドで作りたいのでそれに合う生地を探している」とユーザーが問い合わせると、企業側が「好みは? サイズは?」とテキストベースでリアルタイムにチャットのやり取りをしながら、膨大なサンプルページの中から適切を思われる生地が掲載されたURLを送ることができる。お互いがその場で同じページを見ながらベストマッチなものを探していく――ということが可能になる。電話だと、「○○のページから○○をクリックいただきますと……」というような説明が必要になるが、ここではそんなムダも削減できる。

webのIM Webに組み込まれたIMでのコミュニケーション

 また異なるケースでは、当社の顧客のバッグ・ジュエリーメーカーがECサイト上にIMを導入した。同社の場合は、利用者同士がサイト上で商品を見ながらチャットを楽しむためのツールとしてIMを導入しており、立体的に再現された仮想の街を散策しながら、違う場所にいる友人と「これカワイイね」「こっちの色の方が良くない?」など、リアル(現実)な感覚でショッピングを体験できる。

 これまでサイトを見ながら友人とチャットをしたい場合は、別のIMソフトを立ち上げるしか方法はなかったが、Web上のIMは、ユーザーにとってはソフトを起動しなくてもサイトにログインするだけで、ショッピングもチャットもできる環境が整う。

 ブログやSNSが情報の蓄積・共有などナレッジマネジメントに特化し、グループウェアや掲示板が進化したものだとすれば、IMはメールにリアルタイム性や可視化といった特徴を付加させたものだろう。

 気軽に揮発性の高いコミュニケーションをする、もしくは迅速に情報を処理する最適のツールとして活用できる方法が、この他にもまだまだ存在する。友人との連絡、企業内の連絡、という発想の枠を越えたコミュニケーションがより一層拡大するものと期待している。

 このように、コンシューマーを巻き込んだBiz IMの流れでいえば、2007年は企業が提供するWeb上の仮想空間を介して利用者同士が時間や情報を共有する「Web2.0+リアルタイム」がキーワードとなりそうだ。

渡邉君人

IMを中心としたアプリケーションソフトウェア開発を行うQriptの代表取締役CEO、大阪大学大学院工学研究科博士課程に在籍中。中学時代からコンピュータと向き合うプログラマー、現在は社長業に注力。2000年の設立以来、コンシューマーからエンタープライズ向けまでの幅広いIM製品の開発と販売を行っている。


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