現場至上主義を捨て、疲労度をコントロールする“若葉マーク”社員を活性化させる「実感主義」の育成戦略(1/2 ページ)

かつては日本企業では、現場にすべてがあったのかもしれない。若い人材を上手に育てていく風土もそうだ。しかし、いま現場はそんな余裕を持っていない。人を育てるには新しい手立てが必要なのである。

» 2007年02月23日 09時00分 公開
[アイティセレクト]

若い人材の旺盛な学習能力

 SIerなどのシステム系の企業では、より効率的な開発環境を作るということが経営にとっても、現場にとっても基本命題になる。コンサル業務などの仕事はある程度経験を積んだスタッフが担当することが多いだろうが、システムのテストなどは若手が中心になって人海戦術で行うケースが多い。しかし最近ではそんな方法よりも効率的にテストできるツールが出てきている。テスト一つとっても常に工夫しようという能力を若い人材に植え付けようとすることは重要だ。新しい技術を吸収する能力は、若手の方が圧倒的に高い。ベテランになってくるとどうしても従来の方法に頼ってしまうことが多い。(参照記事)

 システム構築を主要業務としている日本総研ソリューションズの技術本部、研修部の安藤学氏は「新しい技術、ツールを知り、それをどう活用していくかを考えることで、仕事を切り盛りする実感がわくはずです。本当に優秀な人材は誰に言われなくても自分で勉強して、現場で提案する。しかし、現実にはそんな人ばかりではない。『こんな新しい世界がある、仕組みがある』ということを知ることは、成長したいという意欲を多いにかきたてるはずです。効率的な開発環境を作っていく上で若手社員は非常に頼もしい人材なのです」と語る。

 日本総研ソリューションズでは若手社員に対して現場の仕事から切り離し、実地演習的な研修を一定期間、課している。これは、若手の視野を広くすることも意図しているが、新しい知識、技術を現場にフィードバックさせることも目的としている。

 安藤氏は若手社員に「会社を頼るな」と話しているという。それは現場で仕事をしていれば、何かを学び、自然と成長するのではないかという漠然とした甘い期待感を吹き飛ばすものだ。現場が若手社員を鍛え、成長させることは間違いない。しかし、現場にいる若手社員自身が「現場に対する甘い幻想」を抱くことはあまり良い傾向とはいえない。自身の個人的な成長まで日常業務に依存していては、トップレベルのスキルを身につけることは難しい。

 「教育はすべて現場で。OJTが基本です」。そんな言葉を繰り返す企業が多い中、日本総研ソリューションズの試みはユニークだといえる。

 安藤氏によれば、同社で実施している研修は若手社員の新しいネットワーク作りにも役立っているという。

 「研修を卒業した若手が、新人の研修運営の手伝いをしていくれることも多いんですよ。こちらは強制なんてしていないのですが、自主的に顔を出して、動いてくれる。社員教育の一端を担う者として、これほどうれしいことはない。やはり、自分が研修を受けたときの新鮮な驚きとか、新しい仲間ができたいい思い出があるからなのだろうと思います」

 ネットワークを作り、情報を共有、蓄積し、現場以外の場所で新しいことを学んでいく、そんな環境を常に意識することが、若手社員のみならず、組織全体を活性化させるものになるはずだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ