スパムと呼ばれる迷惑メールが世界的に急増し、深刻な社会問題と化している。それは、メール文化の存亡さえも揺るがしかねない危険性をはらんでいる。
シマンテックはこのほど、世界180カ国に設置した約2万4000個のセンサーで構成される「グローバルインテリジェンスネットワーク」による2006年1〜6月の監視状況から、対象となる全メールのうち54%を迷惑メールが占めるという結果を公表した。同社シニアセキュリティレスポンスマネージャの濱田譲治氏は、「2005年ごろ一時的に減少したが、再び増加に転じているようだ」と現状を分析する。
スパムが全メールの半数を超えるとなると、システムインフラへの負荷が増え、サーバの増強と回線の強化、対策ツールやアプライアンスの追加など大きなコストが発生する。かといって制限を加えすぎると、重要なメールが不達になることがある。そのため、IT管理者、社内ユーザーともに心理的、作業的負担が大きくのしかかる。
スパムが増加する背景には、メールの送信コストが安いことに加え、確実にもうかる仕組みが維持されていることがある。「現在のスパマーは、本気で利益を得ようと組織化しているため、法制度の回避を含めて今後はより巧妙、悪質化していくことが予想されている。“日本市場”にも手をこまねいてはいないだろう」(濱田氏)
米市場調査会社のラディカティとメールソリューション企業のミラポイントによる、エンドユーザーを対象とした共同調査(2005年4月発表)によると、「スパム内のURLをクリックしたことがある」(39%)、「スパムの指示に従って配信停止の依頼をした」(55%)、「スパムをきっかけに商品を購入した」(11%)、「電子メールの詐欺で損をした」(9%)という結果が示された。これを見る限り、スパムは極めて効率的な商売の手段になっているといえる。
スパム送信の目的自体も変化した。当初は薬物やポルノなどの広告だったが、最近ではさまざまな商品の販売を装った架空請求などの詐欺にシフトしている。また、特定の企業や個人を狙い撃ちした「スピア型攻撃」として、パスワードやアクセスコードを盗み取るスパイウェアやキーロガー(キーボードの入力履歴を読み取るスパイウェア)などを送り込んでいる(「月刊アイティセレクト」3月号のトレンドフォーカス「まん延する凶悪スパム メール文化に 危急存亡の秋!? 急を要する本格対策」を再編集した)。
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