第8回 日本列島を襲うスパムの実態とは考察! まん延する凶悪スパムの対応策

昨今、爆発的に増え続け、世界的に社会問題化している迷惑メール。対策ツールも多種多様にわたってそろいつつあるが、その根絶は難しいまま。それはなぜなのか。また、こと日本に限っては、どんな特徴があるのか。専門家の意見を聞いた。

» 2007年03月26日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),アイティセレクト]

財団法人日本データ通信協会で迷惑メール相談センター相談・指導グループ担当部長を務める原和彦氏に、国内の迷惑メールの実態について聞いた。

原和彦氏

高度に専門的なっているスパマー

―― 迷惑メール相談センターの活動とは?

 総務省による特定電子メール法 に基づく登録送信適正化機関として、2004年7月に「迷惑メール相談センター」を協会内に設置した。迷惑メールへのアドバイスや違反送信者に対する措置、送信停止などにつなげる迷惑メール関連の情報収集・調査・分析を行っている。

 寄せられる相談は、迷惑メールを受信する側からが圧倒的だが、中には迷惑メールと間違われないメールマーケティングの方法を知りたいという企業からのものもある。

―― 迷惑メール撲滅はなぜ難しいのか?

 日本では、2000年ごろから急増した携帯電話向けのワンクリック詐欺などによって、特定電子メール法が制定されるほど迷惑メールが社会現象となった。しかし、法律で規定する違法メールと、一般利用者が迷惑メールと感じるものは必ずしも一致しない。そこが、白黒つけやすいウイルスとは異なり、内容を判別する基準があいまいで、システム的に定義できない迷惑メール対策の難しさだ。

 また、スパムの大部分が送信者情報を詐称していることから、送信者を突き止めることが非常に困難になっている。スパムを送信するスパマーと広告・宣伝ツールとして使う広告主は別であることが多いことも、その追及を難しくしている。

 さらに、スパマー自身、送信元が探られるような振る舞いを一切行わないなど巧妙になっている。特定電子メール法制定後、スパマーが年間1〜2件ほどしか摘発されないのは、スパマー自身が高度に専門的になったあかしだ。

出会い系なども含め、中国から大量に送られてくる!?

―― 海外での迷惑メールと日本での迷惑メールの違いは?

 日本では出会い系広告がほとんどで、欧米のような薬物やアダルト系の比率が小さいことが挙げられる(下グラフ参照)。

 海外では「スパム王」と称するスパマーが堂々とメールを発信し、真っ当な商売として成り立たせていることがある。一方、日本では暴力団などの地下組織が運営している場合が多く、そのほとんどで料金を違法に請求するなどの詐欺的行為が行われている。そこが大きく異なる点だろう。

 また日本の場合、理由はいまだ明らかではないが、大半がテキストベースで、HTMLベースのスパムがあまりないという傾向がある。さらに、ボット経由のスパムもほとんど存在しない。

迷惑メールの内容の変化(日本データ通信協会あてに情報提供のあった違反メールのサンプル分析結果の集計)

―― ボットネットがこれだけ問題になっているのに?

 迷惑メール相談センターでは、モニター機を設置して継続してスパムを回収し、その発信(中継)元を調べている。それにより、2005年12月から国内発の比率が減少し、ここ数カ月は低レベルにとどまっていることが分かった。反対に、海外、特に中国からのものが大半を占める状況になっている。(ただ、中国から発信されるものはボットネットを利用したものが中心ではない。)ボットネットを使ったスパムであれば、発信元が中国に偏っていることはないため、世界各国から送信されていると考えられる(からだ)。もちろんボット経由のスパムも存在している。だが、(それについては)スパマーが送信拠点を中国に移したと考える方が自然だ。

 また、出会い系サイトへの勧誘が大半という日本の迷惑メールの状況を見ると、全世界向けのアドレスリストを持っているはずのボットからの送信とは考えられない。というのは、出会い系への勧誘は、日本国内に特化しないと意味がないからだ(「月刊アイティセレクト」4月号のトレンドフォーカス「まん延する凶悪スパム 対策のカギはシステムの高度化とルール遵守にあり」を再編集した)。

※1 「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」のこと。「特定電子メール」とは、受信することを承認していない人々に対して広告・宣伝目的で送るメールのこと。送信者の住所、氏名の表示義務、拒否された場合の再送信の禁止やその罰則などを定める。2005年11月の改正で、特定電子メールの範囲拡大、罰則強化などが施された。
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