「人に効く」――これがHP流の働き方(1/2 ページ)

自由度の高い働き方とオフィスコストの削減が実現できるとして注目される「フリーアドレス」。フリーアドレスの先端を行くHPの働き方とはいかに?

» 2007年03月05日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 社内に自分専用のデスク環境を持たない「フリーアドレス」。社員のメリットは、自席に縛られずに効率的な働き方を実現できる。企業のメリットは、オフィスコスト削減や優秀な人材の獲得と流出の防止だ。近年は大手企業でも本格的に導入が始まった。

 米Hewlett-Packardは、1995年頃から社員の生産性向上を目的に職場環境の改革に取り組む。2006年からは、柔軟な働き方を実現する4つのコンセプト「4C」(コミュニケーション、コラボレーション、コンセントレーション、コーチング=研修)による職場環境の実現を図った。

市ヶ谷オフィス 市ヶ谷オフィスのレイアウト。画面左下にはフォーカスブースがある

 日本ヒューレット・パッカードでは、2006年9月に都内拠点の一部を集約し、千代田区市ヶ谷の本社オフィスに4C環境を導入した。管理統括ワークプレースソリューション本部企画室の西崎泰司氏は、「リアルとバーチャルな空間、ITツール、サービスの3つテーマで、HPの考える環境を導入した」と話す。

 市ヶ谷オフィスに在席する社員約1300人のうち、営業やマーケティング部門など800人がフリーアドレスを利用する。対象部門の社員は、日中の業務の大半が社外となるため、メール確認や資料作成などの作業は、コクヨの「DESK@(デスカット)」といったレンタルオフィスを利用しているという。

オフィス内 右手は間接部門の固定席、左手がフリーアドレス用のスペースとなっている

 社内の在席率は夕方のピーク時でも60%に満たない。このため、社内業務用に用意されたフリーアドレスの座席は半分の400人分しかない。その代わりに個人作業や会議、機密性の高い業務など、必要に応じて社員が働きやすいスペースやITツールを整備している。

 HPは「風通しの良い」社風だといい、社内は誰がどの席にいるのかが分かるようにオープンな環境だ。フリーアドレスのパティーションは低く作られ、移動も自由に行える。簡単に会議スペースを作れるなど、社員が気軽にコミュニケーションできるように配慮した設計がなされている。

フォーカスブース 集中作業や打ち合わせ用のフォーカスブース

 一方で、特徴的なのが「フォーカスブース」と呼ばれる個室だ。ここでは防音構造を採用し、海外との電話会議や機密性の高い打ち合わせなどで社内に音が漏れないために、また静かな環境で集中したいという社員のニーズに応えたものだという。

 フリーアドレスのように対面機会の少ない環境では、社員同士のコミュニケーションロスをいかに無くすかが課題となる。そこでネットミーティングやインスタントメッセンジャーなどのコミュニケーションツールを活用し、リアルでもバーチャルでも円滑な社員同士のコミュニケーションの場を提供する。

プリンター プリンターはどこの座席からでも15メートル以内に配置されている。Webで用紙やトナーの残量も確認できる

 こうしたフリーアドレスを支えるのが「コンシェルジェサービス」という、総務部門の活躍だ。「間接部門は『社員を管理する』という意識ではなく、『サービスを提供する』という意識で活躍している」と西崎氏。例えばプリンター用紙やトナーの残量をWebで管理でき、無くなる前にトナー交換や補充が行える。社員が利用する際に、「紙が無い」「補充してください」といった手間を解消できる。

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