「ITリスク」と「企業ブランド」の関係性は明らか――CMOカウンシル

CMOカウンシル(Chief Marketing Officer Council)によると、ITリスクと企業ブランドの間には明らかに関連が見られるという。

» 2007年03月22日 19時43分 公開
[ITmedia]

 「公になったセキュリティ侵害事件は、明らかに企業ブランドに悪影響を与える。漏洩が明らかになったその日のうちに、企業の株価に約2%ものダメージが生じたという調査結果もある」(米SymantecのCMO兼エグゼクティブ バイス プレジデント、ジャニス・チャフィン氏)――。

 米国に本拠を置くマーケティング担当役員の業界団体、CMOカウンシル(Chief Marketing Officer Council)は3月22日、セキュリティ上の脅威やITリスクと企業ブランドの関係についてまとめた報告書の内容を説明した。

 CMOとは、文字通り企業のマーケティング業務全般を統括する責任者のことを指す。広告や販売、広報といったさまざまな分野にまたがってマーケティング業務全般を取り仕切る立場であり、企業のブランド価値向上において果たす役割は大きい。日本においてはいまだ、CIOともども、企業レベルで戦略を統括するまでには至っていないのが現状だが、今後企業価値を最大化していく上で、マーケティングおよびCMOの役割はますます重要になってくるだろうという。

 このマーケティングの観点から見た場合、情報漏洩をはじめとするセキュリティ関連の事故は、企業にとって大きなダメージにつながる可能性があるという。CMOカウンシルとEmory大学の共同調査でば、情報漏洩が発覚した場合、株式市場では0.63%から2.10%の価値が失われるという結果になった。

 また、同カウンシルがまとめた「Secure the Trust of your Brand」というレポートによると、取引している会社で深刻なセキュリティ侵害が発生し、自らの個人情報がないがしろにされていることが分かった場合、推移を「見守る」としたコンシューマーは32%。一方、「他社への変更を強く考える」は35%、「すぐに他社に変える」も27%に上った。企業の信頼性への目も厳しく、特に日本人の場合、オピニオンリーダーが信頼できない企業に対し、81%が「その企業の製品やサービスを利用しない」と回答したという。

 「ITリスクとブランドの関連性は明白だ」(チャフィン氏)

 コンシューマーにとっても、また企業経営者やマーケティング担当者にとっても、ITリスクは大きな関心事になっていると同氏は述べ、それだけに、セキュリティ問題やITリスク管理への対処をうまく行うことができれば、企業の差別化につながるとした。

 具体的には、インフラと情報、インタラクション(やり取り)という3つのレベルにおいて「信頼」を確立していくことが必要だとチャフィン氏。またITリスク管理においては、基本に忠実に、自社内のリスクの把握、継続的な改善プロセスの確立、全社員による共通理解の浸透といった取り組みが必要だという。

 ただ、どれほど真剣にITリスク管理に取り組んだとしても、情報漏洩などのセキュリティ事故を完全になくすことは不可能なのも事実。万一そうした事態が生じたときは、「まずきちんと状況を公にすること。また、マーケティング業務のリーダーは、事件が起こったときに誰とコミュニケーションを取り、どんなアクションを取るべきかといったプランを事前に作成し、迅速に対応できるよう準備を整えておくことが重要だ」という。

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