第1回 メッセージ文化を創造したポケベル緊急特集「さらばポケベル」(2/2 ページ)

» 2007年03月26日 07時30分 公開
[村田嘉利,ITmedia]
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メッセージ文化を創造したポケベル

 ポケベルの進化における大きな出来事を図2に示す。

ポケベルサービス 図2:ポケベルサービス発展の流れ

 「ポケットベル」とか「ポケベル」と呼ばれるが、「無線呼出しサービス」が正式な呼称となっている。ポケットベルおよびその短縮系であるポケベルの由来は、不明とのことだ。サービス開始当初は呼び出し音だけであったことから、ポケットに入れて持ち歩くベルということから自然とポケットベルあるいはポケベルと呼ばれるようになったと言われている。

 1968年7月に始まった日本最初のポケットベルシステムは現在の携帯電話システムのようにデジタルの「0」と「1」に周波数の偏移や位相の偏移を割り当てるデジタル伝送方式ではなく、郵政省から許可された150MHz帯の周波数帯域の中を15Hz間隔で44個のトーン信号に分割し、その組み合わせでポケベルを呼び出していた。ポケベル端末の容積は144ccもあり、現在のワンセグケータイより大きく、連続使用時間も10時間とケータイよりも短かったことになる。

 1978年には呼び出し信号をデジタル情報で送る200bps方式が開発された。その後も需要の増加とメッセージを送りたいとの要望に応えるため、新たなシステムが開発され、最終的には6400bpsで信号を送る「FLEX-TD」方式が開発された。

 20年近くにわたってNTTの独占状態が続いていたが自由化され、1987年にテレメッセージがサービスを開始した。この競争状態の発生と技術の進歩により、ポケベルが急激に進化していく。テレメッセージ各社は、NTT方式とは異なり、英国の郵政省の当たるところ(現Ofcom)で開発された「POCSAG」というシステムを採用し、当初から数字の伝送・表示が可能であった。当然、NTTもこの年にそれまで単に呼び出すだけであったサービスに数字を送れるサービスを加えた。

 それまでは呼び出されると、事前に呼び出し者を決めておいて、そこに電話をかけて用件を聞くなり、電話する先を確認するなりしていた。それが数字を送ることができるようになった結果、電話をかける先の電話番号を受信して、直接相手に電話できるようになった。

 NTTとテレメッセージの競争によりポケベルは急速に進化し、伝送できる情報種別も数字や定型文に続き、仮名漢字まで伝送できるようになった。システムの進化と呼応する形で、ユーザーの利用も進化し、数字で電話番号を送るのではなく、数字の語呂合わせで「0840(オハヨウ)」とか「14106(愛してる)」のように数字の組み合わせでメッセージを送ることが考案され、メッセージング文化が形成されていった。

 その後、数字の組み合わせでカナ変換表示型ポケベルが発売されるに伴い、メッセージング文化が一挙に開花し、「ベル友」ブームが到来した。このベル友ブームも1995年をピークに減少し、ユーザーはPHSを経てケータイに移行していった。

 1990年代後半からは、インターネットからポケベルにメールを伝送するサービスの提供、モデムのようにノートPCと組み合わせて利用するPCカードタイプや各種表示板にメッセージ情報を中継する外部端子付きポケベルの販売といったケータイによるモバイルコンピューティングを先取りする状況にあった。

 これらの動きもPHSやケータイに移行し、ケータイインターネットの隆盛につながっている。最後はケータイが禁止さていた病院内での利用や災害時に緊急連絡などの極限的な利用のみとなっていた。

 次回は、ポケベルビジネスに焦点を当てて見ていこう。

村田嘉利

岩手県立大学ソフトウェア情報学部教授。1979年〜2006年、NTTおよびNTTドコモにて移動通信技術やコンテンツ、マルチメディアサービスの開発に従事。2006年7月より現職。


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