番外編 ポケベルが鳴りすぎて(後)緊急特集「さらばポケベル」(2/3 ページ)

» 2007年03月30日 09時00分 公開
[樋口由美子,ITmedia]

ハイテクの裏はローテク

 こんな、ただのポケベルユーザーだった私が、逆にサービスを運営する側になった。今でも良く覚えているコンテンツが2つある。

 1つは、NTTドコモの「映画館空席情報」だ。ユーザーは、まず東京、大阪、名古屋などの地域を指定する。この地域の映画館の空席情報が、平日は夕方の1日1回、休日は昼と夕方の1日2回配信されるというものだった。

 ユーザーは恐らく、映画館の担当者がパソコンに座席の混雑状況を入力して、その情報がNTTドコモに集められて、ユーザーに提供される――そんな仕組みを想像していたと思う。しかし、この頃は大規模な映画館であっても、バックヤードにパソコンなんてなかった。しかも映画館の人たちは毎日の営業で忙しい。

 答えはどうか。実は、コンテンツ運営側が1つ1つの映画館に電話をかけて混雑状況を聞き、情報を表にまとめてユーザーに提供するという仕組みだった。また、このような単純な仕事の性質からいって、明らかにこれは新人の仕事だった。

 私が入社したばかりの頃の会社は、私が入社して半年の間は新人を採用しなかった。私は半年の間新人で、毎日毎日、映画館の空席情報を更新していた。平日は夕方の1回更新だから慣れてしまえば簡単な作業だが、あまりにもたくさんの映画館に電話をかけないといけないので、とにかく時間がかかる。

 だから、「夕方の打ち合わせには行けません」というような、寂しい思いをしたこともある。それに、映画館の混雑状況なんて一番に求められるのは土日ぐらいだ。もちろん土日出勤もあったが、この土日出勤がくせ者で、幾つかのコンテンツを更新して、あとは会社で飼っている魚にゴハンをあげるくらいの仕事しかなかった。人によっては、昼間からビールを飲むつわものもいた。

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