元ベテランエンジニアが繰り出す妙技――経営を変えるITCITコーディネータ徹底活用術(2/2 ページ)

» 2007年04月04日 07時00分 公開
[大西高弘,アイティセレクト編集部]
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契約形態はさまざま

 田中氏はこれまで20社近い企業にITCとして関わってきた。そのうちの半数以上の顧客がシステム導入が終了したのちもコンサルタント契約を田中氏と交わしている。

 「一段落がついた後も引き続きお手伝いさせてもらえるというのは、大変ありがたいことです」と話す田中氏だが、氏は顧客との契約について次のように語る。

 「契約の方法はITCによって違います。私は多くの場合、月額いくらという形で契約することが多いですね。今月は大丈夫でも、来月は契約が打ち切られるかもしれない、という緊張感が必要だと思うからです」

 もっとも、契約を打ち切られる可能性は顧客の側にもある。田中氏は自分から契約を打ち切ったことはないようだが、真剣に全社でIT経営に取り組まないと判断されるとその先はないかもしれないのだ。

 新しい顧客と初めて会う前は、インターネットでの情報収集はもちろん、関連書籍を大量に買い込んで事前の勉強をしっかりとしていくという田中氏だが、元は大手コンピュータメーカーの技術者だった。

 田中氏のように元エンジニア、元技術者というタイプのITCもいるが、もちろん会計や経営の専門家からITCに転じた人もいる。田中氏もプロジェクトによっては、各方面のプロフェッショナルに参加してもらい、問題解決に当たることも多いと話す。

ごまかしのきかないITCの仕事

 田中氏は「PA情報システム」という会社も経営している。つまり独立系のITCだ。コンサルティングを受ける側のITCに対する不安について聞いてみた。「経営者はみなさん真剣です。こちらが息詰まるぐらいの迫力をお持ちの方ばかりです。ベンダーと結託してうまく儲けてやろうなどというITCがいたとしても、そんな浅はかな考えはすぐに見破られてしまうでしょう」と田中氏は答えてくれた。

 「いわゆるコンサルタントの中で、経営者の話もロクに聞かないで、自説をとうとうと話す人がいます。しかしその場では感心されるかもしれないが、ITCの場合5段階のプロセスで経営とITの架け橋を作らなくてはならない。理論だけでは到底仕事にならないようになっているのです」(田中氏)

ITCの活動範囲

7:3を3:7へ

 経営者の悩みに耳を傾け、ITCは顧客企業の将来像と業務プロセスの改善を提案していく。そしてその提案内容を実現するITを構築する手順を考える。

 例えば田中氏と契約を継続する企業が多いのは、提案として納得し、ぜひ実現したいと考える改革プランを達成するには時間がかかるからなのだろう。顧客は時間がかかってもどうしてもやらなければならない改革だと納得しているのだ。

 「常々話すのですが、役員以上の人は3:7でなくてはならないと。何の数字かというと、3は現在の業務について考える割合、7は将来についての割合という意味です。部長だとこの割合が5:5ぐらいでしょうか。しかし現実はそうはなっていないケースが多い。役員クラスでも、現在の業務で手一杯というケースもある。業務改革にしても、役員と部長以下の人たちではアプローチが違う。今現在のことだけを考えて業務プロセスの改善をしただけでは、本当のIT経営とはいえないのです」と田中氏は話す。

 真剣勝負の中だからこそ、会社の将来を見越したIT導入が現実味を帯びてくるのだろう。

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