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» 2007年04月02日 07時00分 公開

ITコーディネータ徹底活用術:火だるま寸前! 危険なIT導入からの生還――ITCが暴走防ぐ (1/3)

「良い会社」の長所をさらに伸ばしてくれるのがITの本質。では、弱点の補強や改善にITを役立てるにはどうすればいいのか。そのとき経営者の強い味方になってくれるプロ集団がITコーディネータだ。

[大西高弘,アイティセレクト編集部]

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「あなたの会社の名医を探せ! ITコーディネータ徹底活用術」でご覧になれます


「リアルタイム生産管理システム」は何をしてくれるか

 「ある中小企業の社長が相談に来た。組み立て製造の会社です。社長が言うには、どうも不良品が多い、そこでリアルタイムで生産を管理できるシステムを作りたいと。それで原因を探ってみると、実はその会社の製造現場に問題があるのではなかった。部材を仕入れている業者の製品そのものが原因だった。社内でリアルタイムの生産管理システムを作るとか、そういう問題の前に、仕入れる部材のチェック機能に問題があったのです」

 こんな話を紹介してくれたのは、モバイル・インターネットキャピタルの代表取締役社長、西岡郁夫氏だ。インテル日本法人社長を務めたことのある西岡氏は、大企業、ベンチャー、中小企業それぞれのIT導入について豊富な知識を持つ。氏が紹介してくれたような事例は、まるで笑い話だが、こういうエピソードは中小企業だけにあることではない。大手企業でも成功したIT導入のこぼれ話として似たようなことを聞かせてくれることがある。

 西岡氏の話は、その中小企業の社長の愚鈍さを指摘するものではない。たとえ現場に落ちているネジ一本の種類まで分かる社長でも、現場が見えなくなることは起こり得るのだ。

モバイル・インターネットキャピタル 代表取締役社長 西岡郁夫氏

会社の内も外も毎日変化している

 もしこの会社で社長の望むとおり「リアルタイム生産管理システム」を構築していたらどうなるか。原因が外からの部材にあったのなら、不良品は少しも減らない。何千万円も投資して不良品が減らない責任は誰がとることになるのだろう。まさに会社全体が火だるまになるところだった。

 この会社に弱点があるとするなら、製品の品質に対するチェック体制を現場が構築できないということだ。もしかしたら、部材を納めている業者は何十年も取り引きのある会社で、社長は非常に信頼を置いていたのかもしれない。しかし、いつのまにかそうした納入業者の内部で変化が起きている可能性がある。これまで自社内で生産していた部材を別の会社に任せてコストを浮かせるようになったのかもしれない。また、部材を納品されて組み立てていく自分の会社の現場にも変化が起きているかもしれない。業者が納入してきた部材をこれまではベテラン社員が人知れずより分けて完成品に不良が発生することをできるだけ防いでいたが、その社員が退職して、後任の社員はそうした細かな作業について継承していなかった、ということもあり得る。

 トップや経営層の知らないところで、小さな変化が会社の内外で起こり、その積み重ねが大きな問題を引き起こしている可能性もあるのだ。

長所を伸ばしてくれるIT

 問題が起きた時、IT導入によって経営者は事態を打開しようとした。「リアルタイムで生産のラインを監視できるようにすれば、きっと不良品は減り、コストを削減できる」と考えたわけだ。しかし原因はそこにはなく、製品品質のチェック体制の甘さという、もっと根深いところにあるということが判明したわけだ。「なぁんだ、業者に注意すればいいだけのことだな」ということで一件落着する話では実はないのである。

 ITは会社の弱点をいつのまにか消し去ってくれたり、隠してくれるものではない。

 「ITはマジックじゃないということ。これを忘れてはいけません」と西岡氏も指摘するとおり、ITがしてくれることは長所をより伸ばしてくれるということだ。作業フローが長年の経験からよく練りこまれていて、スタッフもこれを熟知し、全てがドキュメント化され、問題点を見つけたら常に改善する体制が整っている、あるいは、スタッフ同士の情報共有が進んでいて遠隔地でのやり取りも正確に間違いのない方法が取られている、というような会社の仕事に対して、ITは計り知れないメリットを提供してくれる。仕事をより早く、正確なものにして生産性を急激に向上させる。

 このような会社はマジックを求めない。自分たちの仕事をITがどのように効率的にしてくれるのかを知っているからである。

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