15年ぶりのチャンスを生かせ強い中堅企業のIT化シナリオ(1/3 ページ)

中堅・中小企業を取り巻く環境が好転している。日本のものづくりを支えてきた工作機械業界は2005年12月には単月ベースで過去最高の受注額を記録。バブル期の以来の長期低迷を脱した。今こそ、IT化のチャンスである。

» 2006年03月31日 08時00分 公開
[宍戸周夫,ITmedia]

 オンラインムック強い中堅企業のIT化シナリオ第1回第2回第3回に続く中堅IT化を考える2回目。

宍戸周夫

 ここにきて、中堅・中小企業を取り巻く環境が好転している。長年低迷していた株式市場は勢いを取り戻し、製造業の設備投資も回復してきた。これによって個人消費や雇用も上昇に転じ、中堅・中小の流通、小売り、サービス業などでも明るい兆しが出ている。

 一方、法制面でも中堅・中小企業に対する見方を改め、中小企業基本法や新会社法などを施行、その活躍の場を広げようとしている。この好機に中堅・中小企業は何をすべきなのか。その取り組みいかんで、中堅・中小企業の中でも「勝ち組」と「負け組」が決まってくる。

好転する中堅・中小企業の経営環境

 景気回復に伴い、中堅・中小企業にもかつてのバブル期を彷彿とさせる活況が戻ってきた。日本のものづくりを支えてきた工作機械業界は、バブル期の1990年を最後に長期低迷にあえいでいたが、2005年12月には単月ベースで過去最高の受注額を記録。自動車や電子部品など、製造業の積極的な設備投資の恩恵を受ける格好だ。

 背景には、大手企業が中国など東南アジアに大きな需要の高まりを見出しており、それがそのまま中堅・中小企業の経営環境にも好影響を与えている。設備投資の回復に伴い個人消費も勢いを増し、流通業、サービス業でもバブル期以降の新たな成長路線を歩みだした。

 景気低迷の尺度に「3つの過剰」という言葉がある。3つというのは「雇用」「負債」「設備」だ。それぞれが過剰になれば不況というレッテルが貼られる。しかし現在、例えば設備は、先行指標といわれる機械受注を見ても分かるように、バブル期を追い越そうという勢いだ。過剰どころではなく、不足感が出てきた。雇用も過剰ではなくなってきている。そして負債も、その解消には好条件がそろってきた。

 金融機関による不良債権処理は急速に進み、また株式市場が回復したことで市場からの資金調達も以前に比べれば容易になった。法制面でも、中堅・中小企業を支援する環境は整ってきている。

 本稿の第2回目で、1999年に改正された中小企業基本法が、旧中小企業基本法に比べて180度視点を変えたと指摘した。同法は、中小企業を社会的弱者と位置付けていた従来の視点を改め、中小企業を一転して「日本経済の新たな牽引役」と前向きに位置付けたのだ。

 さらに、5月に施行される新会社法も、中堅・中小企業への配慮が大きな特徴となっている。最低資本金制度の撤廃や取締役会設置義務の廃止など、たとえ資本は小さくても十分な経済、社会活動が展開できる基盤がこの新会社法によってもたらされようとしている。

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