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» 2006年03月22日 08時00分 公開

強い中堅企業のIT化シナリオ:米ニューエコノミーを境に変化した日本の「中堅・中小企業」 (1/3)

かつて中堅・中小企業は弱者と見られてきた。旧中小企業基本法を見ても明らかだ。だが、米国におけるニューエコノミーの台頭によりそのイメージは劇的に転換した。

[宍戸周夫,ITmedia]

 オンラインムック強い中堅企業のIT化シナリオ第1回に続く中堅IT化を考える2回目。

宍戸周夫

 かつて、中堅・中小企業を「社会的弱者」と見る人が少なくなかった。それは、1963年に制定された旧中小企業基本法を見ても明らかだ。同法は経済の二重構造論を背景として、中小企業を非近代的な構造を持つ組織と位置付け、大企業との「格差の是正」を政策目標として掲げた。いわゆる「脱中小企業論」である。中小企業に対してさまざま援助策、保護策を講じて、その状況からなんとか脱出させるというのがこの法律の主旨であった。

社会的弱者から一転

 しかし、そうした中小企業に対する見方は20世紀とともに過去のものとなった。1999年に中小企業基本法が改正され、そこでは中小企業を一転して「日本経済の新たな牽引役」と前向きに位置付けている。そして、中小企業を「新たな産業を創出し、就業の機会を増大させ、市場における競争を促進し、地域における経済の活性化を促進するなどわが国経済の活力の維持および強化に果たすべき重要な使命を有するもの」(第3条、基本理念)と規定したのだ。

 つまり、中堅・中小企業に対する見方が世紀をまたいで180度転換したということになる。中堅・中小企業は弱者ではなくなり、むしろ、21世紀の日本経済の牽引者となった。

 中堅・中小企業に対する見方が180度転換した背景には、1980年代前半から1990年代後半にかけての日本と米国における経済の逆転劇があった。重厚長大な製造業によって高度成長をおう歌していた日本経済だが、それまで経常赤字と財政赤字という「双子の赤字」を抱えていた米国経済に追い抜かれたのだ。

 米国経済が日本経済を追い抜いた最大の要因は、米国のITベンチャーによるニューエコノミーの台頭であった。その様子を見ていた日本は、中堅・中小企業に対する見方を「非近代的な構造を持つ産業」から「我が国経済の活力の維持および強化に果たすべき重要な使命を有するもの」と改めたのである。

産業構造を変換したIT

 日本が中堅・中小企業に対し、旧中小企業基本法の下で助成金などの保護政策を講じていた間に、米国ではベンチャーキャピタルが自らのビジネスとして、名もなき企業に対して積極的な投資を行っていたというわけだ。特に、インターネットが本格的に普及する1995年以降、その投資は急増する。

 米国ベンチャーキャピタル協会によると、1980年に6億ドルであったその投資額は、1996年には66億ドルと10倍以上に膨れ上がった。日本のような政府による保護政策ではなく、キャピタルゲイン(資産益)を得ようとする民間投資会社のビジネスが米国のニューエコノミーを生み出し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまでいわれた日本経済をいとも簡単に追い抜いたと考えられる。

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