米ニューエコノミーを境に変化した日本の「中堅・中小企業」強い中堅企業のIT化シナリオ(3/3 ページ)

» 2006年03月22日 08時00分 公開
[宍戸周夫,ITmedia]
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中堅・中小企業こそ日本経済の担い手

 日本でも、中小企業基本法がその立場を一変する1999年あたりのタイミングで、多くのITベンチャーが誕生した。東京・渋谷周辺にはネットビジネス関連の起業家たちがオフィスを構え、「ビットバレー」と呼ばれたこともある。

 今も語りぐさになっているが、2000年1月にはその交流会が六本木のクラブ「Velfarre」で開催され、約2000人が参加、そこにはなんと、当時の速水優日銀総裁まで現れた。誰もが、日本経済の新たな担い手が出現したことを肌で感じていたのだ。

 ビットバレーという言葉はその後の「ネットバブル崩壊」とともにあえなく消え去るが、それまで何のゆかりもなかった中堅・中小企業とITという2つの言葉がここで結びつくことになった。新中小企業基本法の理念にあるように、かつては弱者と見られていた中堅・中小企業がITによってその暗いイメージを払拭し、新たな道を歩み始めた瞬間である。

 言葉は中堅・中小ではなく「ネットベンチャー」だったかもしれないが、日本でも産業構造を転換し、経済を牽引する新しい勢力が誕生してきた。もちろん、当時のオン・ザ・エッヂ、その後のライブドアのように曲折を迎える企業も出てきたものの、全体的なストーリーとしては、中堅・中小企業がITと結びついて経済そのものを支える力となった。

 かつての二重化構造論の中では、中堅・中小企業はその弱点として、資金調達力、情報収集能力の弱さ、営業力や技術力の低さなどが指摘されていた。しかしこうした弱点そのものも、ITの力によって大きく改善されている。

 日本は欧米や中国、東南アジアに比べてまだまだ劣っているとはいっても、新事業を創出するインキュベーションの環境が整備されてきた。IT、とりわけインターネットによって、どんなに小さな企業でも世界から情報を収集し、自ら発信する基盤を手に入れることができるようになった。

 インターネットは中堅・中小企業の営業力、販売力も支えている。インターネット通販によって、企業規模や地域という制約を超えて自らの商品を販売している会社がいくらでもある。

 中堅・中小企業にとって、ITほど似合う言葉はないのである。

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