同調査では、IT部門のスタッフに関する調査結果も出ている。
IT関連の要員数は現状維持が基調となっているが、従業員1000人以上の大企業では、増加と減少の二極化が起こっているという。また、部門内で「入社以来IT部門」という要員が「8割以上」と答えた企業が全体の約30%にもなり、ビジネス部門経験者や情報子会社・ベンダー経験者が1人もいないと答えた企業は全体で最も多かった。この結果を見ると、他部門との人事交流は進んでいない状況も垣間見られる。
しかし、IT要員に必要な能力については、「戦略・企画力」と「プロジェクトマネジメント能力」と答えた企業がそれぞれ半数を超えている。人材育成施策として最も多いのは、「社内研修」でついで「外部研修」となっている。ビジネス部門との「ローテーションの実施」を人材育成の施策として挙げている企業は3%に止まった。
「目の前の問題に取り組むのが精一杯で、部門として時代のニーズに合わせた成長をしようというアクションが取れない、という現状はあるだろう。しかし、大企業を中心に戦略・企画力を高めていこうという意識ははっきりしている」と語るのは、今回の調査で調査部会長を務めたJALインフォテック 取締役副社長の浜田達夫氏。
喫緊に要請されている課題以外の投資を予算化することは、景気が回復してきている現在でも、簡単なことではない。そうした背景もあって、今回の調査では新しい技術に対する取り組みや、これまで挑戦していない経営課題について消極的な結果が出てしまったのかもしれない。
戦略立案や企画力とプロジェクトマネジメント能力がこれからは必須の能力となる、と回答する企業が多いことからみれば、数年先の同じ調査では、今回の結果とはかなりかけ離れたものが発表される可能性もあるだろう。そのきっかけとなるのは、IT部門自身が変ろうとすることに加えて、経営層、ユーザー部門の要請がビジネス寄りに変化してくることも関連するはずだ。
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