情報の裏側をどう読むか?〜議論を嫌う日本人の皆様へMicrosoft ECM & BI Conference 2007

情報の真実や価値を発見することが、日常のさまざまな場面において要求される。ビジネスでの現場でも同様だが、そのためにはITのどのような活用法が用意されているのだろうか。

» 2007年04月16日 16時19分 公開
[井上健語(ジャムハウス),ITmedia]

 マイクロソフト主催のカンファレンス「Microsoft ECM & BI Conference 2007」が4月12〜13日の2日にわたって開催された。「BI Day」となる13日には、ソフトブレーンの創業者であり、現在は同社のマネージメント・アドバイザを務める宋 文洲(そう・ぶんしゅう)氏による基調講演からスタートした。多くの著書を持ち、ネット上でもコラムを執筆し、テレビをはじめとするメディアへも多数登場している氏の第一声は、日本のメディアそして日本人そのものへの疑義であった。

 例えば地方の新聞には、全国紙と同じ記事が当たり前のように載っている。なぜもっと多様な記事を載せないのか、と新聞社の幹部に聞くと、それが「地元の要望だから」という答えが返ってくるという。

 また、自身もメディアに登場した経験から、メディアは8割の人間がそう思うだろうという情報しか流さない。2割の意見を流して8割の人間から批判されるリスクを、メディアは決して取らないのだと指摘。

 多くの人が、日本にはグレーを認める文化があるという。しかし、海外でもグレーは認めるし、上記のようなメディアの状況を見ていると、日本人こそ白黒でしか情報を見ようとしない人が多いのではないか、と問いかける。

 だからこそ、自分が得た情報の裏側を知る努力が必要であると氏は説く。異なる意見に耳を傾ければ、これまで間違いないと思っていたことが、別の視点から見るとそうではないということが分かってくる。それによって、ときには自己否定につながるほどの苦痛を味わうこともあるが、その努力を怠ってはいけない。そして、議論とは、情報の裏側を知り、真実にたどりつく作業であると強調する

ソフトブレーンの創業者であり、現在は同社のマネージメント・アドバイザをつとめる宋 文洲(そう・ぶんしゅう)氏

議論とは相手とともに真実を見つける作業

 宋氏は議論のルール(あるいはマナー)を知らない日本人が多いと指摘する。そのルールとは次の3つだ。

  • テーマに忠実である
  • 発言者の個人攻撃をしない
  • 論理的である

 まず、議論にはテーマがあり、テーマから外れた発言をしないのが原則だ。当たり前のようだが、意外と守られないことが多い。第二点も当然だが、これもまた感情が激してくると守られなくなるケースはよくある。第三点も分かってはいるが難しい。氏の表現を借りるなら、論理が失われ、感情だけになった議論は「けんか」ということになる。

 議論は決して相手を否定したり、論破するためのものではない。相手とともに真実を見つけ出す作業なのだ。ところが、著名なジャーナリストも含めて、日本人は攻撃されることに慣れていない。それは、日本の学校教育が「議論する」という習慣を削り、議論するというトレーニングを怠ってきた(怠っている)ことも関係しているのではないか、と日本の教育システムにまで話は拡大する。

 ジョークを交えた訥々(とつとつ)としたしゃべりで聴衆の笑いを誘いながらも、我々日本人に耳の痛いトピックを真正面から取り上げた内容であった。

マイクロソフトのBI宣言

 情報価値の発見をテーマにした基調講演に続いて行われたゼネラルセッションでは、「マイクロソフトのBI宣言」と題し、マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 本部長 五十嵐 光喜氏によるマイクロソフトの国内BI市場に向けた取り組みが紹介された。

マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 本部長 五十嵐 光喜氏

 まず、マイクロソフトが取り組むPeolpe Ready Businessが、社員がポテンシャルを最大限に発揮して会社としての総合力を高めることをサポートするビジネスであると説明された。そして、それを実現するには、限られた人しか使えないのではなく、すべての従業員が使える情報価値の発見のためのツールが必要であり、そのために存在していた従来のBIソリューションには次のような問題がある、と指摘された。

  • 高価である
  • 専門知識が必要である
  • 新しいシステムへの教育コストがかかる

 そこでマイクロソフトから提案されたのが、Excelをフロントエンドとし、データ共有にSharePoint、データベースにSQL Serverを置く三層構造のプラットフォームである。

 ただし、この三層構造自体は特に目新しいものではない。注目すべきは、マイクロソフトのプラットフォームを利用すると、データベースを設計し、データをデータベースに集約し……という従来のボトムアップの手法だけでなく、従業員が日常的に行っているExcelの分析を共有し、データベースに落とし込む、従来とは逆方向のソリューションが可能になる点である。

 使い慣れたExcelを利用できるため、特別な専門知識も不要となり、新しいシステムへの教育コストもほとんど発生しない。しかも、低価格で実現できるBIソリューションというわけだ。

 デモとしては、SQL Server 2005 Data Mining Add-ins for Office systemによる実演が行われた。これは、SQL Server 2005とExcel 2007を導入すると無償でダウンロードして利用できるExcelのアドインプログラムである。

 Excelに売上データを読込、数回ボタンをクリックするだけで将来の売上予想をグラフ表示したり、商品Aが売れると商品Bも売れるといった相関関係を分析・表示するデモに、多くの聴衆が高い関心を示したようだ。

5月上旬よりPerformancePoint Server 2007 CTP2のダウンロード提供開始

 セッション後半では、Microsoft CorporationでBIアプリケーション製品を担当するディレクター、Ryan Buma氏による社員力を経営力に活かすための方法論と、それを実現するマイクロソフトの製品が紹介された。

Microsoft CorporationでBIアプリケーション製品を担当するディレクター、Ryan Buma氏

 冒頭にBIソリューションに対する顧客の要望とそれに対応するマイクロソフトのテクノロジーが示されたあと、PerformancePoint Server 2007の概要が説明された。

 PerformancePoint Server 2007は、SQL ServerやOfficeと連携する業務管理アプリケーションだ。スコアカード、ダッシュボード、管理レポート作成、分析、計画、予算作成、予測、連結など、パフォーマンス管理に必要なすべての機能を備えている。昨年12月にCTP1の提供が開始されたが、本セッション中に、5月上旬からCTP2のダウンロード提供が開始されることがアナウンスされた。

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