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» 2007年04月20日 08時00分 公開

八田教授が語る「ここがヘンだよ、IT業界の内部統制」 (1/3)

4月25日、26日に行われる「RSA Conference Japan 2007」のマネージメントトラックの中でも注目の講演を行う、青山学院大学大学院教授の八田進二氏が、IT業界の内部統制に対する姿勢を斬る。

[高橋睦美,ITmedia]

4月25日、26日の2日間にわたり、東京・ザ・プリンスパークタワー東京で「RSA Conference Japan 2007」が開催される。国内で6回目の開催となる今回のテーマは「リスクコントロールと情報セキュリティ」だ。

 セキュリティの確保は、企業の存続さえ左右しかねない問題になっている。そうした観点から、経営や企業のリスクコントロールについて切り込む一連のセッションが「マネージメントトラック」だ。この中で講演を行う青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授の八田進二氏に、内部統制を取り巻く最新動向を伺った。


 「『ITなしに内部統制はない』といった勝手な解釈が一人歩きしている。こんなにIT、ITとはしゃいでいるのは日本だけだ」――青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授の八田進二氏は、日本版SOX法や内部統制対応ブームに沸く業界に対し、このように苦言を呈した。

 EnronやWorldcomといった大企業での粉飾決算を機に、米国では2002年にSOX法(サーベインズ・オクスリー法)が制定された。その流れを受けて日本でも、2008年度をめどに改正金融商品取引法、いわゆる日本版SOX法が実施される。実施時期が迫り、基準が明らかになっている以上、上場企業を中心に、内部統制の整備を急務としている企業は多い。

 金融庁企業会計審議会委員・内部統制部会部会長として、日本版SOX法のガイドラインとなる「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」を取りまとめてきた八田氏は、この制度は「初めて日本の企業経営トップに意識改革を迫るものだ」と述べた。

青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授で、金融庁企業会計審議会委員・内部統制部会部会長の八田進二氏

 そもそも内部統制とは、経営者が的確な経営を行うために必要な一連の組織や仕組み、プロセスのことを指す。しかしこれまではもっぱら、経営者がその下で働く社員をコントロールするための仕組みという意味合いで取られがちであり、経営者自身はその枠外にあった。

 しかし日本版SOX法のベースとなっているCOSO(the Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)の「内部統制に関する統合的な枠組み」では、経営者自身もその仕組みの中にはめ込まれ、規制を受ける。そして、経営者が内部統制の仕組みを壊して暴走することのないようチェックするのが取締役会や監査委員会、あるいは監査役ということになる。

 これまでは会社の末端で不祥事があった場合、経営者は「聞いていなかった」「知らなかった」で済ますことができたと八田氏。しかし日本版SOX法では、「情報が伝わらないのであればきちんと伝わるように、見えるように仕組みを整え、それを責任持って末端にまで浸透させていくことを求める。もはや『知らなかった』は逃げの抗弁にならない」(同氏)

日本の実態に合わせた2つの調整

 日本版SOX法の実施基準は、基本的には、米国のCOSOが策定した枠組みをベースにしている。しかし米国の内部統制制度を丸ごとそのまま持ってきたわけではなく、日本の制度に合うよう微調整が加えられていることが特徴だ。

 「そもそも制度的背景が異なる上、独自の法的、経営環境で作られている。そのうえ、COSOの枠組みがまとめられたのは90年代初頭のこと。日本の基準では大きく2つの修正を加えた。1つは国内化を図ること。もう1つは最新化すること」(八田氏)。

 このうち国内化というのは、具体的には、内部統制の目的として「資産の保全」を加えたことを指す。有形無形の会社の資産・財産を適切に効率的に利用、維持していくことを明示した。

 「IT」が俎上に上ったのは、もう1つの最新化の一環としてだ。「企業が置かれている環境は激変しており、ITという要素は無視できない。非常に便利であり、それだけにひとたび悪用されたときはその影響の大きさは計り知れない。組織を運営する上で、経営者は企業内外の最新のITの動向について十分に留意してほしい、ということ」(八田氏)

 ところが、この部分に業界が飛びついて「IT、IT」と過熱気味の状態だと同氏。そもそも日本版SOX法は財務報告に関する枠組みを提示しているものなのに、財務や会計に関する正しい知識を持たない人たちまでが騒いでいるのではと指摘する。

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