八田教授が語る「ここがヘンだよ、IT業界の内部統制」(3/3 ページ)

» 2007年04月20日 08時00分 公開
[高橋睦美,ITmedia]
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 監査を行って、すべてが完璧という結果に終わることはまず考えられない。何らかの問題や不備は出てくるものだろうと八田氏は言う。

 問題は、ここで発見された不備をどのように是正していくかだ。指摘された不備があまりにも長い間放置されるのは問題だという。事実米国では、初年度に指摘された内部統制の欠陥による影響はあまり影響がなかったが、2年目以降の内部統制監査の結果も指摘事項のない企業の株価は短期間で上昇したという結果も照会されている。

 「一回限り、という形では内部統制はそもそも続かない。一過性のものだととらえると大やけどをするだろう」(八田氏)

前向きな取り組みが自らを守る

 また、初めから「これが理想だ」というひな形を作り、それに当てはめていこうとするアプローチにも問題があるという。そもそも企業の業態や規模、組織形態は千差万別であり、「1つの理想的な手続きやプロセスをすべてに当てはめようとするのはナンセンス」(同氏)。

 今の企業の仕組みを支えている規定や関連文書などを棚卸しし、企業におけるリスクを見極めながら不十分なところを洗い出し、リスクに見合った形で対応していく、というごく当たり前のアプローチが重要であり、それを実現するには「組織に精通した人でなければ対応できない」という。

 内部統制の整備には当然、相応のコストがかかる。「言われるままに最低限のことをやる」という姿勢ならばこれはただの出費に終わるだろうが、内部統制の整備を機に業務や組織の改革、効率化につなげていくことにより、最終的には必ずや企業価値を高めることになるだろうという。

 そもそも、日本版SOX法およびガイドラインで定められているのは、「最低限ここまではやってほしい」というミニマムの部分だと八田氏。そこに、顧客満足度の向上なり、何なり、さまざまな目的や要素を付け加えていくのは経営者の自由だし、そここそが経営力が問われる部分だとした。

 内部統制というものは、直接的なベネフィットがなかなか見えず、不祥事が起きて初めてその重要性が分かるという性質のものだけに、経営者に対する動機付けとして弱い部分があるのは事実だという。これを企業に根付かせ、深みを持たせていくには、経営者が納得し、前向きに進めていくことが重要だと八田氏。

 「前向きに対応することが、自らの身を守ることになる。経営者はやるべきことをやっておかなければ、枕を高くして寝ることはできないだろう」

本記事の関連コンテンツは、オンライン・ムック「『内部統制』に振り回されない賢いログ活用とは」でもご覧になれます。


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