SAPPHIRE '07 AtlantaでカガーマンCEOがキーノートに登場、「Business Network Transformation」と、それを支える「エンタープライズSOA」こそが、企業に競争上の優位をもたらすと話した。
米国時間の4月24日、SAPの年次ユーザーカンファレンス「SAPPHIRE '07 Atlanta」は2日目を迎え、ヘニング・カガーマンCEOがキーノートに登場した。早朝から特設会場を埋めた約5000人の顧客やパートナーらを前に、カガーマン氏は、新しい経営のコンセプトである「Business Network Transformation」と、それを支えるITのコンセプトである「エンタープライズSOA」こそが、企業に競争上の優位をもたらすことを強調した。
「1990年代は、ERP導入とBPR(Business Process Re-engineering)によってオペレーションの効率化が実現されたが、今や20分ごとに企業の買収・合併があり、3分半ごとに新しいコンシューマー製品が生まれている時代だ。企業が生き残るにはアジリティが求められており、生産性と同時にイノベーションも加速しなければならない」とカガーマン氏。
カガーマン氏が競争優位の源泉とする「Business Network Transformation」は、社員、サプライヤー、顧客、およびパートナーらからなるネットワークを最適化し、イノベーションによって競争優位を勝ち取る一方、差別化につながらないタスクは可能な限り生産性を追求するという経営の考え方。「Business Transformation」という言葉はしばしば耳にするが、「Network」が間に入っているのがミソだ。ビジネス環境の変化とイノベーションによる差別化の必要性が増す中、企業はその枠を超えて連携しなければならない。
ちなみに2年前のSAPPHIRE '05 Bostonで彼は、「ビジネスレベルのプラグ&プレイ」と表現し、ビジネスプロセスが企業を超えて緩やかにつながり、動的に追加や変更が可能で、それでいてうまくコラボレーションできる「Adaptive Business Networks」の時代が到来すると予言している。
「どうすればベストな体験を顧客に提供できるか? 補完的なパートナーとコラボレーションし、まるで1社が提供しているかのようなシームレスなソリューションが求められる」とカガーマン氏。
彼は、ある伝統的なチョコレートメーカーがパートナーとITを活用してビジネスを変革し、ギフト市場で成功を収めた事例も紹介した。
「Business Networkはビジョンではなく、現実だ」とカガーマン氏は話す。
SAPは2003年、SOA(サービス指向アーキテクチャー)をエンタープライズレベルに引き上げるエンタープライズSOAを発表し、翌2004年には、「イノベーションによる成長」を掲げてSAP NetWeaverを市場に投入した。この2007年には、SAP ERP 2005だけでなく、PLM(Product Lifecycle Management)、SCM(Supply Chain Management)、SRM(Supplier Relationship Management)、およびCRM(Customer Relationship Management)といったすべてのビジネススイートが約束どおり、エンタープライズSOA対応となって出そろう。
Business Networkでは、1つのバリューチェーンとして複数のプレーヤーがアドホックにつながるわけだが、それぞれの企業では仕事のやり方も異なるはずだ。
「企業や人によって働き方が違うが、それぞれの良いところを組み合わせられればいい。SOX法への対応といった課題もあるので、Web2.0的なコラボレーション機能によって構造化されていないタスクも統合し、また、それをエンドツーエンドで監査する機能なども、自動化のための新しいレイヤーとして必要になるだろう」とカガーマン氏は話す。
昨年のSAPPHIREでベールを脱いだDuetは、今回のSAPPHIRE '07 Atlantaで将来のロードマップが明らかにされている。単にSAPの機能やデータを使い慣れたOfficeから呼び出すことができるというだけにとどまらず、構造化されていないタスクとSAPの構造化されたビジネスプロセスをうまく組み合わせるという点で重要なツールとなる。
「使い勝手を良くするだけでなく、構造化されていないタスクを統合したり、知識を集積させることもできる」とカガーマン氏。
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