Flexオープンソース化に秘められたMS追撃の阻止(1/2 ページ)

「Adobeは『Silverlight』の侵攻を食い止められるだろう」(ガートナー)。RIAの代表格として知られるFlexは、デベロッパーの協力の下、大きくシェアを延ばせるだろうか。eWEEKの分析は。

» 2007年04月27日 16時26分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 米Adobe Systemsが、同社のWeb開発フレームワーク「Adobe Flex」をオープンソース化すると公式発表を行った(関連記事)

 カリフォルニア州サンノゼに拠点を置くAdobeは、オープンソース開発コミュニティーにFlexのソースコードを提供し、世界中の開発者が同フレームワークの機能を自由に利用し、現在も進められている同技術の開発に携われるようにしていくという。

 Flexは、Web上で利用されるクロスオペレーティングシステムのリッチインターネットアプリケーション(RIA)や、デスクトップ向けの新たな「Adobe Apollo」アプリケーションを開発するプラットフォームだ。

 Adobeのエンタープライズおよび開発者向け事業部門担当製品マーケティング副社長を務めるジェフ・ワットコット氏は、「『Moxie』のコードネームで呼ばれる次期版から、Flexをオープンソース化する」と述べた。

 ワットコット氏によれば、Adobeは6月にMoxieの事前リリース版を提供する予定だという。「それ以降は、同技術に関する開発成果物を日々配布していく。公共のバグデータベースも立ち上げるので、体裁も実際の活動も雰囲気も、まさしくオープンソースプロジェクトといったものになる」(ワットコット氏)

 ただし、2007年後半か、可能性の高いところでは2006年の秋になるとみられるMoxieのリリースまではFlexをオープンソース化するつもりはないと、同氏は説明した。

 Moxieのリリースに際しては、オープンソースのFlexソフトウェア開発キット(SDK)と仕様書が「Mozilla Public License(MPL)」の下で公開される。

 FlexをMPLに準拠させてオープンソース化することにより、ソースコードに対する完全に自由なアクセスが確立され、開発者はFlexコンパイラ/コンポーネント/アプリケーションフレームワークのソースコードを無料でダウンロードしたり、拡張したり、追加したりすることが可能になる。

 Adobeは今後もFlex SDKとその他のFlex製品を従来の商用ライセンスに従って提供し、新規および現行のパートナーや顧客がみずからの必要に応じてライセンス体系を選択できるようにする意向だ。

 ワットコット氏は、開発者にとってMPLは「非常にバランスのよい」ライセンスで、オープンソース技術を段階的に取り入れていこうと考えている場合は特にメリットが大きいと評価している。

 「MPLの採用によって、長らく取り組んできたFlexのオープンソース化がついに成就する」(ワットコット氏)

 2006年6月、AdobeはFlex 2 SDKを開発者らに無償提供することを発表したが、当時は同技術のオープンソース化までは約束していなかった。

 オープンソース版のAdobe Flex SDKには、人気の高いFlexフレームワークを構成するMXMLコンパイラと「ActionScript 3.0」ライブラリが含まれる。これらを併用することで実現される先進的かつ標準ベースの言語プログラミングモデルは、BMC SoftwareやeBay、Salesforce.com、Scrapblog、Samsungなどの大手企業も利用しており、ユビキタス性の高い「Adobe Flash Player」上で実行するRIAの開発に役立っていると、Adobeは話している。

 同社はこれまでも、「ActionScript Virtual Machine」のソースコードをMozilla Foundationの「Tamarin」プロジェクトに提供したり、Apolloプロジェクトでオープンソースの「WebKit」エンジンを使用したり、PDF 1.7のフル仕様をISO標準化を目指したりするなど、技術のオープン化に積極的な貢献を果たしており、このたびの取り組みもその延長線上にあるという。

 英国のエンタープライズコンテンツ管理企業Alfrescoの最高技術責任者(CTO)、ジョン・ニュートン氏は、「Flex SDKを用いて、エンタープライズコンテンツ管理の利便性および利用性を強化することに大きな関心を寄せてきたが、このたびのAdobeの取り組みでそうした関心はよりいっそう強まった」と述べた。

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