ガートナーのアナリストであるマーク・ドライバー氏は、Flexのオープンソース化を大きなトピックだと称し、AdobeがMicrosoftの追撃を振り切る推進力になるだろうと分析している。「これでAdobeは『Silverlight』の侵攻を食い止められるだろう。Web界から上がっていた、Flexのプロプライエタリ性を懸念する声も静まるはずだ」(ドライバー氏)
市場分析企業RedMonkを創設したジェームズ・ガバナー氏も、「オープンソースを駆使した共同創造は、強力な開発コミュニティを築くのに最適な方針だ。Flex SDKをオープンソース化するというAdobeの大胆な決断は、新たな開発者層を同プラットフォームに引き寄せるだろう」と指摘した。
このほかBurton Groupのアナリストであるリチャード・モンソン・ヘーフェル氏も、Flexのオープンソース化は英断だと述べている。
「しばしばベンダーは、不振状態に陥ったソフトウェアを救うため、最後の手段としてオープンソース化へ踏み切る場合があるが、Flexはそうした製品とは異なり、これまでも市場で優位に立っていた。今回のAdobeの決定は、きわめて賢明なものである。同社は、オープンソース化によってFlex SDKがこれまで以上に急速な進化を遂げ、ひょっとすると予想もしなかった方向へ勢力を伸ばしていく可能性を視野に入れていたのだ」(モンソン・ヘーフェル氏)
さらにモンソン・ヘーフェル氏は、Adobeが販売している「Flex Builder 2」の「すぐれたIDE(統合開発環境)」についても言及し、このたびのオープンソース化は「すでに堅調な売り上げを誇っていた同製品および『Enterprise Data Server』の勢いをさらに増す取り組み」だと話した。
そればかりか、Flexのオープンソース化はAdobeのApolloプラットフォームも活気づけるという。「Flexフレームワークの利用者が多くなれば、Apolloプラットフォームの魅力も増す。Adobeにとっても開発コミュニティにとっても、よいことずくめだと言える」(モンソン・ヘーフェル氏)
ワットコット氏によれば、ウェブ開発コミュニティではRIAの配布方法がよく話題に上るという。「今こそそうした環境に飛び込むべきだと、われわれは声を大にして言いたい。Flexのオープンソース化によって、いまだ未成熟なRIA開発コミュニティは格段に進化するだろう」(ワットコット氏)
もっともAdobeは、Flex Builder IDEの販売も継続するつもりだ。同製品の価格は499ドルからとなる。なお、FlashおよびApollo技術のオープンソース化に関しては、何のコメントも出されていない。
一方、フォレスターのアナリストであるジェフリー・ハモンド氏は、ApolloおよびFlexを擁するAdobeと、Silverlightおよび「XAML(Extensible Application Markup Language)」を擁するMicrosoftの戦いが激化すると予測している。これは同時に、偏在性の高いMicrosoftの「WPF(Windows Presentation Foundation)」と、偏在性が高いとされているオープンソースの戦いであり、ソフトウェアビジネスモデルにおける新旧対決と読み解くこともできる。
Adobeがオープンソース化の意向を明らかにするまでは、「Flexは他社の商用製品と競合するプロプライエタリ技術の1つに過ぎず、標準ベース製品ユーザーがAdobeもしくはMicrosoftのどちらかに肩入れすることはなかった。ここへ来て、標準推奨派にはAdobeを支持する大きな理由ができたのである」と、ハモンド氏は語った。
4月29日から5月2日にかけ、Microsoftはラスベガスで「Mix 07」カンファレンスを開催し、同社独自のRIAやウェブ開発戦略に関するさまざまなプランを話し合う予定だ。
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