バックアップをブラックホール化させないためにわが社のビジネス継続性を確立する!

バックアップシステムの運用が適切に行われていなければ、イザというときに利用できないケースも考えられる。これではまるで「データのブラックホール」であり、BCPに取り組んだ意味がない。プライマリのシステム/データはビジネスの変化に合わせて変化し続けており、バックアップ側の構成も、それに追随させていかねばならないのだ――。

» 2007年05月02日 07時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

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必要なときに役に立つようにするには

 ある程度以上の企業であれば、主要なシステムのデータをバックアップしていることと思う。しかし、その中には、バックアップが「取りっぱなし」になっているケースも多いのではないだろうか。むしろ単なる「お荷物的作業」として、単に日常作業の1つの要素として漫然と処理されているのではないだろうか。しかし、作りっぱなし、取りっぱなしのバックアップで、果たして本当にイザというときの役に立つとは考えがたい。

 例えば、バックアップ対象データ量が増えて規定時間内に終わらなくなっていて、しかもバックアップ処理の監視が行き届かずに見落としていたとしたら、あるいは、システムの更新で必要なデータの種類が増えたにも関わらず、それがバックアップ対象に含まれないまま運用されていたとしたら、それまでの地道なバックアップ作業は全て無意味なものとなってしまい、すでにバックアップしたデータさえ、使われなくなってしまう。

 もし本当にバックアップデータが必要になった際、きちんと役に立つような形を作るためには、毎回のバックアップで確実な処理が行われていることを確認できるようになっているか、また、バックアップデータが完全であるかどうかを一定の頻度で確認するようなルールが作られ、運用されているか。こうした日常の監視と定期的なチェック作業が不可欠なのは言うまでもない。また、それをさらに確実なものとするための体制作り、人材育成も欠かせない。

 システムは常に変化し続ける。その変更は、バックアップにも反映されているだろうか。前段に触れたようにデータのバックアップに関しても、システム変更後の対応をきちんと行っておく必要がある。フェイルオーバー構成などの場合も、スタンバイ機に対する変更や、変更後の動作確認などをシステム変更作業の一環として最初から盛り込んで確実に実施すべきである。

 これもまた、スタンバイ機の設定が古いままだったら、あるいはシステム変更にともなって切り替えが正常に行えない状態になっていたら、せっかくのフェイルオーバーも意味がないというわけだ。

運用全体を見据えてバックアップ改善へ

 そもそも論外、と言いたいような事態も考えられる。例えば、社員が勝手にファイルサーバを立ち上げていることもあるだろう。こうしたことは、運用ルールやその適用が甘ければ十分に有り得る話だ。マシンごとにIPアドレスを割り当てて管理していても、クライアント用として導入したPCが勝手にHDDを増設されてファイルサーバ状態になっている、といった可能性も考えられる。

 こうしたシステムに関しては、当然ながらバックアップは行き届かない。しかも日常の監視も行き届いておらず、マシン障害のリスクは非常に高い。ここに保存されたデータが失われればユーザーも困るが、運用管理担当者はさらに困った状況に置かれることだろう。

 それだけでなく、情報漏えいの温床になる危険も十分に考えられる。ITガバナンスの観点からは、きちんと運用管理体制全体で予防していくことが重要だ。

 では、どのような対策が考えられるか。特に、BCPに取り組むなら、バックアップの環境改善は欠かせない。ならばいっそ、バックアップ運用の改善のみに目を向けるのではなく、むしろバックアップを起点としてシステム運用管理全体の改善を進めていくことを提案したい。

 一例として、ストレージを統合し、一括バックアップを行うという方法が考えられる。iSCSIストレージなどの普及に伴い、中小規模の企業でもストレージ統合が容易に行えるようになってきた。障害対策面では、バックアップの漏れやミスを減少でき、データ復旧も容易になるなどのメリットが得られる。ストレージ機器の機能を活用することで高度なデータ保護も期待できるだろう。それ以外にも、管理すべきポイントも絞り込まれるため運用の効率化が図られ、ストレージの有効活用でシステムの追加/変更が容易になるなど、広い範囲の効果が考えられる。

 どちらにせよ、バックアップには後ろ向きの姿勢でいるより、前向きに取り組んだ方が、より良い結果に向かうことは間違いないのだ。

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