ビジネス継続に必要な「ヒト・モノ・カネ」って?わが社のビジネス継続性を確立する!(1/2 ページ)

事業継続に取り組む以上、システム面での整備を進めると同時に、関連する多くの要素についても気を配る必要がある。

» 2007年05月09日 07時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

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 インシデント時の対応には、しばしば平常時より多くの人員が必要となる。また、要員の訓練不足や意外なモノの不足で余計な時間がかかるケースもありその結果として想定していた以上の予算が費やされることも少なくない。また、インシデント運用においても、バックアップ運用と同様に、現状のシステムの変化に合わせて常に計画を見直しておく必要がある。

 中でも重要なのは「ヒト」への配慮だ。「人は城」という言葉もあるが、企業もまた人の集団活動から成り立っている。そもそも、システムを使うのは人間だ。システムを動かすにも、最終的には人間の目と手が不可欠。人的な体制が整っていなければ、どんなに緻密な計画があり、どんなに高度なシステムがあっても、大した役には立たないことだろう。

 そしてヒトは、災害などで被害を受けたり行動を制約される可能性が高い。災害時の人の動きは平常時と異なる部分も多く、計画立案やマニュアル作成、システムや資材の準備に際しては、そのことを常に念頭に置いておかねばならない。

 通常時とは違った観点での検討も必要だ。不測の事態に混乱せぬよう、イザというときに慌てず行動できるような訓練は欠かせない。また、通常と異なる状況の中で、的確に現状を判断し、それに合わせて工夫して行動できるような、多分にヒューマンスキルに類する能力に関しても育成を図っておきたいところだ。

「ヒト」の行動をイメージする

 災害時のヒトの動きを一般化しつつ、災害対策に必要な手順や体制がどのようなものになるかをみてみよう。

 仮に、就業時間中に大きな地震があったとすれば、まず最初の揺れが収まった段階で被害状況を確認することだろう。この時点で最も優先せねばならないのは人的被害の確認だ。居合わせた人々の安否確認を行って、もし負傷者がいれば救助し、また二次災害防止のために適切な場所へ避難するなどの行動が採られる。避難場所では点呼を行って、全員が確実に避難できたかの確認を行わねばならない。

 また、製造現場などでは避難行動と同時に稼働中の機器を停止するなどの処置が必要になる場合もあるだろうし、火災が発生したなどの場合にはその対応も必要だ。

 ここまでの活動は、基本的に居合わせた従業員が行わねばならないはずだ。しかも、その場で打ち合わせをする時間も惜しい。避難場所はもちろん、安否確認や消火活動などの手順、それらの指揮系統など、行動の指針となる情報を事前に整理しておくことが、迅速かつ的確な行動につながる。

 一方、安否確認がしづらい外出中の従業員などに関しては、携帯電話のメールなど、連絡手段を確立しておくことが大切だ。また逆に、たまたま居合わせた来客に対しても、適切な避難誘導を行わねばならない。

 その後、二次災害の心配がなく、また建物への被害が軽微で再び入れることが確認された時点で、IT部門や設備担当など、それぞれが復旧チームを編成して行動を開始することになるだろう。このとき、本人または家族の被災、交通機関の麻痺などにより、平常時より人員が不足するケースも少なくない。誰がリーダーシップをとるのか、誰に情報を集約するのか、指示命令系統はどうなるのか、細かな担当の割り振りはどうするのかなど、人員の変動に柔軟に対応できる体制作りも重要だ。

 もちろん、サーバルームにおいては、平常時の運用管理と同じく、作業手順の属人化は避けなければならない。また、余震などの危険も伴うため、迅速かつミスなく処置できるようにしておかねばならない。きちんとマニュアル化しておくことはもちろん、できればチェックリストを作成しておくことが望ましい。

 こうした手順書に関しては、停電の可能性も考慮して、基本的に紙ベースで、十分な数のコピーを用意しておく必要がある。その一方、システムの変更があれば、常に手順書にも盛り込んでおかねばならない。このような準備は、もちろん余計な手間やコストがかかるが、手順書そのものや、それを作る作業自体が運用の確認となり、平常時にも大いに役立つものと言えよう。

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