4月に発足したNokiaとSiemnesの合弁会社ノキア シーメンスが、日本におけるWiMAXおよび次世代無線サービス「LTE」事業を開始する。
ノキア シーメンスネットワークスは5月29日、日本市場での通信機器事業を開始すると発表した。WiMAXおよび携帯電話向け次世代無線サービス「LTE」(Long Term Evolution)を展開する。
ノキア シーメンスネットワークスは、NokiaとSiemensの通信機器合弁会社Nokia Siemens Networksの日本法人として4月に発足した。このほど日本および韓国の統括責任者に、前Siemens Public Communications Networks(India)常務取締役のマイケル・キューナー氏が就任し、日本でのビジネスを本格的に開始する。
日本の通信市場の印象についてキューナー氏は、U-Japan戦略など政府主導のハイエンドなICT市場が形成され、リッチコンテンツを求めるユーザーの動向に期待しているという。一方で、「定額制導入など通信事業者の収益環境は厳しくなり、ベンダーに対してコスト改善につなげる製品・サービスが求めている」と述べた。
こうした市場動向を受けて、同社では通信事業者やエンドユーザーを対象に、IPをベースとした端末アクセスからネットワーク制御、アプリケーションにいたるまでの広範囲な分野を約560種類の製品・サービスでカバーする。キューナー氏は、まず移動体通信事業者向けにWiMAXおよび次世代サービスのLTEを訴求していく考えを明らかにした。
WiMAXは、総務省から免許方針案が示されるなど、サービス開始に向けた動きが本格化する。方針案では、既存の3G携帯電話事業者の参入が制限され、新規事業者の参入が優先される見通しだ。
ノキア シーメンスネットワークスの小津泰史代表取締役は、「ノキアが開発する端末から当社の基地局まで、MVNOを中心とした新規事業者にコストを抑えたWiMAXソリューションを提供したい」話す。同社では、まずネットワークオペレータにとって大きな負担となる、無線基地局のコストを削減する製品群を投入する。
無線基地局のコストは、設置時の用地取得(または賃貸)費、機器導入費、建設費と、設置後の回線使用料や電気代、メンテナンス費などからなるが「5年間の維持費は導入時の2倍に達する」(小津氏)という。
同社が開発したWiMAX基地局システムは、無線増幅装置の小型化によって設置スペースを大幅に縮小でき、設置費用を「W-CDMAシステム比で約半分、15チャンネルを制御するPHS基地局よりやや高い程度」(小津氏)にできるとのことだ。システムの小型化により、維持コストの削減も実現されるという。
一方、WiMAX端末もNokiaで開発が進められ、WiFiや3Gとのデュアル端末として2008年第四半期のリリースを予定する。小津氏は、「ソニーのPSPや任天堂のDS Liteのようなポータブル端末を充分に楽しむことのできるようなWiMAX環境の実現を目指したい」と、抱負を述べた。
LTEは、下り回線の変調方式にOFDMA、上り回線の変調方式にSC-FDMA方式を採用して、下りで最大100Mbps、上りで最大50Mbpsの高速通信を可能にする技術となる。
MINOに対応し、1.4〜20MHzの低い周波数帯域を利用できるとしている。また、端末待ち受け時の基地局間の通信時間を20msに短縮しているため、端末動作時の負荷の軽減につながり、高速通信が行えながらバッテリの長時間駆動が可能になるという。
LTEビジネスを担当するバート・シュリング氏は、「IPベースのシンプルなアーキテクチャを採用しているため、携帯電話に比べて通信コストをメガバイト単位で節約することができる」と説明する。近年はキャリア各社がARPUの減少に直面しており、シュリング氏は伝送コストを削減することによって、利益率を高めるメリットがあると話している。
すでに同社ではHSPA(HSDPA+HSUPA)とLTEのハンドオーバー技術を確立させいる。2GシステムやHSPA、CDMAそれぞれからの直接的なLTEへの移行や、iHSPAを経たLTEへの移行など「携帯電話事業者の計画に合わせてどのような展開も行える」(シュリング氏)としている。
WiMAXとLTEは、高速通信に対応した広域無線アクセスシステムという点では実際のサービスにおいて競合する可能性がある。キューナー氏は、「新しく始まるWiMAXと既存の携帯電話システムの延長上に当たるLTEは、相互に補完し合う関係として、すみ分けがなされるだろう」と説明し、それぞれに独自の市場展開を図る考えを明らかにした。
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