成功するソフトウェア企業の条件は“コラボレーションとスピード”SpikeSource CEO Kim Polese's Voice

かつてTime誌でアメリカでもっとも影響力のある女性の1人に選ばれたこともあるキム・ポレゼー氏は、21世紀における新しいビジネススタイルについて、オープンソースによるコラボレイティブな開発によって、スピーディーにグローバルにサービスを提供するもの」と断言する。成功するソフトウェア企業の条件とは。

» 2007年06月08日 06時00分 公開
[中村文雄,ITmedia]

 つい先日、NECがIntelとSpikeSourceと提携し、ビジネスインターネットスイート製品「SuiteTwo」の日本語版を提供するという発表があった(関連記事参照)。オープンソースを推進する企業の思惑が透けて見えるこの発表にさりげなく登場しているSpikeSourceは、自らを「コラボレーションによって開発を進め、特化したサービスを提供する」企業と位置づけているが、こうした新たな世代のソフトウェアベンダーが企業のビジネスモデルの変革に大きく寄与している。

 上述の発表に先立って、5月30日から3日間、東京ビッグサイトで開催されていた「LinuxWorld Expo/Tokyo 2007」において、SpikeSourceのCEOを務めるキム・ポレゼー氏が「ソフトウェアの未来」と題する講演を行っている。

SpikeSourceのCEOを務めるキム・ポレゼー氏。

 ポレゼー氏の講演の冒頭、ソフトウェア業界全般について「トップ企業の整理統合が進んでおり、従来より裾野部分が拡大している」という見解を示した。続いて、最近のソフトウェアベンチャーは自己資本で設立されるケースが多いが、その一方、ベンチャーキャピタルの投資額が増加していることを紹介した。

 ポレゼー氏はソフトウェアのコモディティ化が進んでいることを強調し、「1990年代まではトップダウン型のソフトウェアによって、顧客を取り込んで離さないロックインするスタイルだった。しかし、21世紀における新しいスタイルは、オープンソースによるコラボレイティブな開発によって、スピーディーにグローバルにサービスを提供するものだ」とビジネスモデルの変化について解説した。そして、現在のソフトウェアを構成する要素の中から、SaaS、SOA、オープンソースを取り上げ、「SaaSをベースにして事業を推進している企業が主流になりつつあり、Salesforce.comを始めとする、SaaSにかかわる企業の売り上げが急伸している」とソフトウェア業界に起こっている革新を紹介した。

 中でもやはり、オープンソースが最も重要な要素となると説明する。

 「日本においては約2割の企業がオープンソースソフトウェアを導入しており、さらに約2割の企業がこれから導入する意向である。その理由として、導入コストが低いこともあるが、各企業は、運用コストが低いことに注目している」

 ポレゼー氏は、「オープンソースにおいてはコラボレイティブな開発が普通になっており、ほかの業界でもコラボレイティブなビジネススキームが広がっている。これは世界の共通の傾向である」と語る。

 Webテクノロジーによるコラボレーションによって新たなビジネススキームが創出されているが、その代表的なケースとしてポレゼー氏が紹介したのがAmazonの「Webサービス」だった。ビジネスプラットフォームのAPIを提供するAmazonの姿勢を高く評価し、ストレージサービス「Amazon 3S」について触れた。

 ポレゼー氏は、オープンソースの進展を3つの世代に分類した。オープンソースを推進する企業の第1世代は、インフラ構築に関する企業で、2007年には年間売上高4億ドルを超えるRed Hat、株式公開を目指すMySQLを代表的な企業として紹介した。

 第2世代はアプリケーションベンダーで、その特徴については「小規模だが1〜2年で急成長する」と説明し、代表的企業として、数百の顧客を持つJasperSoftをあげた。そして第3世代はコラボレーションによって開発を進め、特化したサービスを提供するSpikeSourceなどの企業を数社紹介した。

 ポレゼー氏は、成功するソフトウェア企業の条件として、「細分化していくマーケットに対応するため、コラボレーションによって新たなビジネスプラットフォームのAPIを開発し、スピーディーに状況に対応して結果を出すこと」と指摘した。そのほかに「一番得意なことだけに注力し、それ以外はアウトソースすること」「さまざまなツールやビジネスモデルを活用して、実験的な取り組みをすること」「ユーザー自身がツールで新しいビジネスサービスを創出できるように、逐次、実験できる環境を提供できること」という条件について説明した。

 ポレゼー氏といえば、かつてはSun MicrosystemsでJavaの顔としてJavaの普及に尽力し、Sunを去ってからはMarimbaという会社を設立し、プッシュ型のアプリケーション配信システム「Castanet」など世に送り出してきた人物である。ソフトウェア業界ではベテランと言っても過言ではない彼女がソフトウェアそのものではなく、むしろサービスに重きを置いたビジネスモデルに興味を感じ、SpikeSourceのCEOの職に就いたことは、やはりソフトウェア業界に起こっている革新が確かなものであることを感じさせる。

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