仮想化がもたらすのはエコなメリットだけじゃない!データセンターのムダを排除せよ

複雑性が拡大し、管理コストが増え続けるデータセンターに、仮想化技術を取り入れて問題解決を図ろうとする動きがある。そのメリットとは――。

» 2007年06月25日 07時00分 公開
[富永康信(ロビンソン),アイティセレクト]

効率化は一時的!?

 住商情報システムIT基盤ラボラトリー副ラボラトリー長の酒井元一郎氏は、仮想化により「サーバ数やライセンス数を減らしてコストを削減できるほか、サーバのリソースをプール化し、新規増設やピーク時の即時対応に向けたコストパフォーマンスの高い設備計画を実施できる」という見方を示す。仮想インフラを境界線にして運用を上位と下位に分離することで、高スキル要員の作業量を削減し、効率的な運用管理を実現できるという。

 しかし、エーピーシージャパン商品開発部担当部長の佐志田伸夫氏は、「サーバ運用の見直しや仮想化によるサーバ数の削減などは、一時的な効果にとどまる」と注意を促す。今後、標準化によるサーバ選択の指針設定や、データセンターの規模の最適化など、構造的な改善が求められてくるというのである。

未来は明るい!?

 「仮想化のメリットは、物理構造と機能が分離されること」と語るのは、ネットワールド専務取締役マーケティング本部長である森田晶一氏だ。データセンターの三大要素であるサーバ、ネットワーク、ストレージのすべてにおいて、ハードウェアと機能が完全に分離されれば、管理手法やマネジメント、さらにはIT投資も一変するという。企業がコンソリデーションを目指すなら、各種アプライアンスも「バーチャル・アプライアンス」に置き換わっていくと予測する。

 「仮想化によって、x86系ならメーカーの縛りを受けることなく、最も効率の良いハードウェアを選択できることになる」(森田氏)

 また、仮想化を促進するソリューションもさまざま登場している。例えば、カナダのプレートスピン社は、既存のサーバリソースの利用状況を分析し、利用可能領域を導き出して、作業負荷や電力消費を最適化された仮想環境上へ自動的に移行させるツールを提供することで、短期間でのサーバ移行を成功させている。

 米トランジティブ社は、「SPARC/Solaris」サーバで利用されるアプリケーションをソースコードやバイナリを変えることなくx86系サーバに移行させる仮想化ソフトウェア「QuickTransit」を開発。これにより、アプリケーションやプロセッサを意識しない仮想化、並びに最新のエコ・システムを実現できるという。

 サーバの仮想化では、仮想化技術の標準化や互換性、計画的な仮想化環境の構築などが今後の課題とされている。ただ、仮想化がインフラとして定着すると、企業のデータセンターで最適なサーバを選択できるようになり、リソースの最適配分などの自動化がさらに進むとみられる。

 一方、事業者としてのデータセンターにおいては、管理・制御システムを地理的に分散することができるため、DR(災害復旧)対策コストを抑制することが可能になる。また、開発・検証環境の一時利用による本番機と同様の環境を容易に再現したバーチャル・ラボなど、さまざまな新サービスが生まれることが期待されている(「月刊アイティセレクト」8月号のトレンドフォーカス「ムダがまん延するデータセンターの実情 仮想化技術が挑む効率化は実現するか」より。ウェブ用に再編集した)。

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