あなたのケータイやブログは大丈夫か――ネット時代の著作権考(2/2 ページ)

» 2007年06月27日 11時05分 公開
[森川拓男,ITmedia]
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 一見、著作権を保有する側にとっても良いことずくめに思える「非親告罪化」だが、どこか問題だというのだろうか?

 著作権法というのは先に述べたように、元々それら著作物を作った人や団体の権利を守るためのものである。先ごろニュースになった「ドラえもん」の最終回事件なども、その一例だ。

 今回、話題に上っている「非親告罪化」は、近年横行している海賊版などへの対策の意味がある。5月31日に政府の知的財産戦略本部が決定した「知的財産推進計画2007」には、海賊版のネットオークション出品禁止や、ネットに違法公開された著作物について、ダウンロードしたユーザーも違法とすることの検討などが盛り込まれたという(関連記事)。あくまでもこの方向は海賊版の取り締まりにあるといっていい。しかし、その裏に何か隠されたものがあったら大変だ。

 ここでまず考えなくてはならないのは、法律というのは1回施行されると、余程のことがない限り変えるのが難しいということだ。もちろん、法律は改正されるし、停止や廃止、失効されることもある。実際、著作権法だって改正を繰り返している。

 だが、往々にして政府・官僚側に立った法律ほど、改正される度合が少ない。なぜかと言えば、そのいちばんの理由は政権の固定化だ。これが政権交代が頻繁に起こり得るような状態であれば、もっと緊迫するだろう。しかし現状は与党が絶対多数を占めている。今、国会の様子を見ても、最終的には数で決めてしまうためにキチンとした議論が行われない傾向がある。

 すると、仮に法律案がまとまって政府案として提出されてしまえば、ほぼ法案は成立してしまうのが現状だ。次の選挙次第でどう転ぶか分からないとはいえ、現在はいくら野党が抵抗しようが、最終的には与党が数の力で押し切る。これが議会制民主主義というものだから仕方がない。

 そして法律というのは、その範囲をしっかり規定しておかないと、あいまいな個所に関しては拡大解釈で濫用される可能性もある。つまり、時の政権や体制に反するものを発表した時、「著作権侵害にあたる」と別件で告発することだって可能になるかもしれないのだ。

 このような意見に対して、「妄想」「デマ」と断じる人もいる。しかし筆者は、そう断じるのは早計だと考える。というのも、法律というのは、それ1つで論じるのではなく、他の関係ないと思われる法律などもセットで考える必要があるからだ。

 もちろん、まだこの話題に関して言えば「話し合われている」段階で、法案として上程されたわけではない。しかし、法案としてまとまって出されてしまってからでは遅いともいえるのだ。事実、もっと審議を尽くさなくてはいけないような法案が、次々と通過している現状がある。これは我々有権者がしっかり監視し、選挙での投票に反映させる必要があるだろう。

 この奥にあるのが権利者保護に繋がらないのであれば、非親告罪化の推進は見直すべきだろう。そもそも、「著作権侵害行為を行わない」ことこそが、権利者保護のために有効なのだ。

著作権に関するブログサービス各社の対応

 著作権に関しては、ブログサービスを提供する側でも対策が取られている。

 以前、筆者が話題にしたのは、書かれたブログの内容が誰のものか、ということだったが(関連コラム)、今回問題となってくるのは、ブロガーが書いた内容自体が著作権侵害していないかという問題となる。

 よく見かけるのが、ニュースサイトなどから記事を丸々引用し、それに対してひと言だけコメントを書くという形態のブログ。確かに、引用というのは著作権法にも違反せずにできることではあるが、それが丸写しであった上に、ほとんど自分の言葉を書いていない場合には、やはり引用の範囲を超えるのではないか?

 そこで、ブログサービスによっては、引用についての注意を促すところも出てきた。そして、「引用」の範疇を越えた「盗用」であると判断した場合、違法行為として削除対象にするとしているのだ。更に、最近増えている他サイトへの誘導を目的とし、違法引用主体で開設されたブログに関しては通知なくアカウント削除をするというところまで出てきている。

 つまり、そのようなブログが増えていることの裏返しである。サービスを提供する側が訴えられないよう、予防線を張っているのだ。逆に、ニュースと写真をブログに引用できるように提供しているサービスもある。

 また、筆者がかつて指摘したポッドキャストに関しても、ユーザーが気軽に利用できるサービスが増えていく中で、さらに問題が広がっているのかもしれない(関連コラム)

あなたのブログは大丈夫なのか?

 ここまで見てきて分かるように、いま、著作権を取り巻く状況に変化が起きつつある。

 著作権法の改正自体は、まだ先の話だが、それでも今年中には大幅な改正法案が提出される動きがあるのだ。

 現行の著作権法が制定されたとき、このようなネット社会は想定されていなかった。いまは、簡単にデジタルデータがコピーされ、流布されてしまう。しかも、単にテキストや画像だけではなく、音声や動画などといった物までも、だ。いや、事実、動画アップロードサイトには、明らかに著作権法違反ではないかという物が上がっている。一応、通報を受けて削除しているようだが、イタチごっこの状態は解消されていない。

 そういう意味では、現在検討されているという「不正にアップロードされたものをダウンロードしたユーザーも違法」とするのは、効果があるかもしれない。確かに、ダウンロードしたことをどうやって調べるのかなど、法的に不明なところが多いのも事実だ。しかし、あえて違法行為を犯そうとしない限り、効果は大だろう。

 最後にもう一度質問したい。あなたのブログは大丈夫だろうか。

 記事の引用、画像、動画、音声ファイルの貼り付け。それが引用の範疇を越えたものであった場合、注意が必要になるかもしれない。アカウント削除ならばまだ可愛い。違法行為で逮捕となったら、生活がメチャクチャになってしまうからだ。それが仮に、無罪だったとしても、だ。

 そうとはいえ、必要以上に考える必要もない。政府の「知的財産推進計画2007」には、「個人の著作物の利用を過度に萎縮させることのないよう留意しながら」という文言があるのだから。

 しかしその一方で、ただ引用しただけの記事を多数のブログへとトラックバックを送信するトラックバックスパムが横行している。そのようなブログに限って、アフィリエイトだらけだったり、アダルトサイトへの誘導に横行している。そして、ブログ検索でも、やたらとそのようなブログがヒットしてしまうのが、事を難しくしている。

 他人の文章を書き写しただけのブログなんて、空しいだけではないか。著作権法がネット時代に適応しようとしているいま、利用する我々ユーザーの側も、考えを改めていく必要があるのではないだろうか。

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