ウチの店、ZARDのCDと松本人志のDVDは、今月何枚必要か?BIツール導入事例(2/2 ページ)

» 2007年06月28日 07時00分 公開
[村上敬,アイティセレクト編集部]
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情報共有とデータ抽出の手間に問題

 もちろん同社では従来から数字の裏付けによる提案を行ってきた。ただ、根拠となる数字は、基幹システムオープン化以前は全国の日計販売数のような大枠の基幹データから導かれたものであり、個別の小売店の事情に即したものではなかった。より説得力のある提案を行うためには、さらに明細なデータが必要だった。より説得力のある提案を行うためには、個別店に即した提案を行うための情報を素早く手に入れ、迅速に分析する必要があった。

 例えば、最近チャートを駆け上がっているZARDのアルバムや松本仁志のDVDをどれだけ仕入れればいいのかは、小売店の規模や客筋によって割り出される適正な数字がある。過去に人気が出始めていた別のアーティストでの売り上げ実績だけではなかなか判断できない。損もしたくないが、みすみすチャンスも逃したくないというのが小売店側の本音だ。これに対して、「確か、以前はこうでしたよね」などと曖昧な記憶からだけで、顧客に提案していてはそっぽを向かれてしまう。迅速に自分たちの店舗に合った品揃えを提案してもらいたい、というニーズに常に応えなくてはならないのだ。

 個人や営業所によっては、中間データを集めてExcelなどで独自に分析を行い、取引先への提案に活かしているところもあった。ただ、属人的な部分が大きく全社共有できなかったり、提案書を作成するためにデータを集める作業だけで1日を費やしてしまうという問題も発生していた。

 一方、明細なデータの抽出に時間がかかりすぎることは、商品の仕入れ部門にとっても問題だった。1日に100枚売れた商品があったとして、その100枚が2軒で50枚ずつ売れたのか、10軒で10枚ずつ売れたのかによって、仕入れるべき数の判断は違ってくる。しかし、基幹システムから抽出したデータをもとに明細な実績をはじき出すには、手間がかかるため、物流部門に問い合わせて出荷伝票を手作業により集計していた。

ユーザーがすぐに使えるツールを

 必要な明細な実績データを、情報部門に依存することなく、各営業現場の担当者が自ら抽出できれば、迅速に有効な提案や仕入れが可能になる。そこで同社では02年に基幹システムのオープン化を決定。さらに明細レベルのデータを手軽に抽出できるイントラネットシステム「clew」を04年にリリースした。こうした手軽にデータを活用できる環境が整ったことで、BIツールの導入の検討に入った。8社のツールを比較した結果、同社が選んだのは「Dr.SumEA」だった。選定の理由を、経営本部、情報システム部、業務システム課課長の羽豆吉成氏はこう語る。「規模的・機能的に充実していたことやコスト面に加え、Excelアドインなので、それまでExcelのピボット分析に慣れていたエンドユーザーが直感的に操作できることが魅力でしたね」。導入は05年の8月に開始。10月にはカットオーバーにこぎつけている。

業務システム課課長 羽豆吉成氏
システム概要図

説得力ある提案で他社と差別化を図る

 明細なデータを集計・分析しやすくなったことで、小売店への提案精度は大きく向上した。

 「これまでのように大枠のデータと営業担当の経験に頼った提案ではなく、現在はアーティストや地域・単店別の過去実績、さらに売り場スペースなどの個別の事情を考慮して、お客様に最適な枚数を提案しています。おそらくここまでやっているところは他にはないはず」と営業担当経験のある情報システム部、業務システム課の永山徹氏も胸を張る。

業務システム課 永山徹氏

 また提案書の作成にかかる時間も大幅に短縮。必要なデータを簡単に検索して抽出できるので、かつては1日がかりだったデータ集めも、現在は10分以下に短縮されている。現在は本社の営業・管理部門や支社のマネジャー層が利用しているが、今後はグループ各社にも活用を広げていく予定だ。

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