「コミュニティーを使ってコミュニケーション、コラボレーション、コーディネーションを活性化させる情報共有、ナレッジマネジメント」を企業で実現させるためには、インターネットとは異なる2つの特性を理解しなくてはならない。
1つは「1%対99%」、2つ目は「ビジネスのルール」だと言える。
インターネットの世界でWeb2.0を支えているのは、1億人の利用者の中で1%のマニアである。
1億人の内で1%の人が毎日ブログを書いても100万人分の情報が書かれることになり、100万人(1%)の人が情報を結ぶことで膨大な知識が結びつくという発想は、企業内では実現しづらい。
なぜならば、企業情報システムは対象者の9割以上が利用者であることが原則だからである。また、1000人の従業員で10人しか使わないシステムでは、目的を達成できるはずがない。
「社内ブログが活性化しない。多くに投稿させる良い方法はないだろうか? 投稿が多い人に報奨金制度を作るべきか? 全員が納得するROI(投資対効果)を見せたいのだが」などと相談を受けることがある。
しかし、Web2.0の世界でインターネットに親しんでいる人たちでさえ、1%の原則に支えられていることは真に受け止めるべきだ。業務に追われている中で、社員の1割が続けられれば、良い方でないかと考えている。
企業の活動は法律や制度に縛られており、業界のさまざまなルールに従って活動しなくてはならない。
そのため、それらを管理、自動化するための財務会計システムや受発注、販売管理、仕入や在庫、出荷システムを始め、文書管理、審査、承認、監査システムなどと文字通り「基幹」システムが稼働しているケースが多い。
また、ホワイトカラーのイノベイティブな非定型業務や基幹業務システムの不足部分を補う形でワープロ、表計算、電子メール、グループウェアなどが利用されている。
これらのビジネスのルールを守るための業務とは、別な「追加業務」「追加機能」としてWeb2.0のコミュニティーを導入すると、それでなくても忙しい社員の負担はさらに増えることになる。効果が見えず、企業の中の個人としてのメリットが見えないものを、「せっかく導入したのだから」という理由で使い続けることは逆効果である。
成功例として紹介されている企業の多くも「Web2.0を導入」を旗印に強引な論理で導入し、「なぜ使わない。とにかく使わせろ」と考える不幸な実体が多い。
エンタープライズ2.0化の目的は、「企業の活動や企業情報システムのイノベーション」であり、「コミュニケーション、コラボレーション、コーディネーションを活性化させる情報共有、ナレッジマネジメント」である。
まずは、自社に合ったこれらの環境がどうあるべきか? そしてイノベイティブな組織、企業を作るために何を行うべきか? を真剣に考えるべきなのだ。
道具から入らずに、まずは、理想のワークスタイルや企業文化を考え、ゴールを明確にすべきだ。そのために必要となる道具とヒントをWeb2.0から探すようにしてはどうだろうか。Web2.0の世界で多くの利用者やビジネスマンによって磨き込まれた技術やビジネスモデルは、真剣に変革に取り組む企業の助けになるだろう。
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