2つ目はエドワーズ氏が支持するアプローチで、必要な機能セットを実装するためにプロプライエタリな拡張機能を組み込むのを認めるというもの。テナムバーグ氏は、「この考え方は手っ取り早く実施できるかもしれないが、それによって相互運用性を実現することはできない。ODF固有の機能ではなく、プロプライエタリな拡張機能をベースにしているからだ」と指摘する。
OpenDocument Foundationでは、ODFの相互運用性に関する同財団のアイデアをプラグインという形で具体化した。これはMicrosoftのバイナリフォーマットとODF間の相互運用性を提供するもので、エドワーズ氏によると、双方向のドキュメント変換プロセスで高い再現性を実現するという。
同財団のプラグイン型変換エンジンは「Da Vinci」と名付けられた。これは、Microsoftのアプリケーションだけが理解できるコード(エドワーズ氏はこれをMicrosoft Word内部の「秘密の関係」のコードと表現している)を解読することができるからだ。その機能は、Microsoftが推進しているOOXML(Office Open XML)変換プラグインと同様だ。
「すべてのMS Wordドキュメントは、インメモリバイナリ表現(IMBR)を内部的に保持している」とエドワーズ氏は説明する。「.docバイナリドキュメントは、IMBRをファイルにダンプしたものに過ぎない。MS Wordの読み込み時には、これと逆のプロセスになる。MS Wordで変換プロセスが起動されると、IMBRは最初に非常に特殊な100%内部的な形式に変換される。われわれはこれをMS-RTFと呼んでいる。というのは、標準のRTFのように見えるが、実際にはそうではないからだ」(同氏)
しかしエドワーズ氏によると、OpenDocument Foundationの変換アプローチの可能性を実現するためには、Microsoftフォーマットのドキュメントに含まれるプロプライエタリな拡張機能に対応するための規定をODFバージョン1.2(現在の予定では07年末にリリースの見込み)に盛り込む必要があるという。
「Sunは、MS Officeに依存するワークグループ/ワークフローのビジネスプロセスで求められる高いレベルの双方向再現性を可能にする変更を、OpenOfficeに加えることに反対した。彼らが提唱する『外部型』プラグインでは、MS Officeに依存するビジネスプロセスに対応することができない」とエドワーズ氏は語る。
Sunから必要な支持が得られなかったため、有望視されていた同財団のプラグインは現在、棚上げされた格好になっている。そしてOASISのOpen Document技術委員会の委員を5年近く務めてきたエドワーズ氏も、プラグインの取り組みから手を引いた。
「われわれは2007年4月に、ODFの相互運用性を改善する取り組みを最終的に断念した。Sunは、Microsoftドキュメントに対するODFの相互運用性を改善する取り組みをすべて阻止あるいは無効化した」とエドワーズ氏は話す。同財団では今後、クライアントサイドのサーバに関連する相互運用性のみに注力する方針だという。
「プラグインアーキテクチャは、MicrosoftとSunのアプリケーションをファイルフォーマットレベルで変換できることが分かっているため、汎用的なファイルフォーマットに向けた取り組みはかつてなく現実味を帯びている。最も必要なのは、巨大なアプリケーションを持った巨大ベンダーや市場シェアに対するどん欲な願望を持っている巨大ベンダーに支配されることのない標準プロセスだ。Microsoftにあれこれ指図するのは政府の役目だ。われわれは市場が要求することを行うことができない」とエドワーズ氏は話す。
エドワーズ氏によると、Open Document Formatの将来を指図する権限が市場に与えられれば、政府機関には受け入れることができない「Rip out and Replace」(廃棄・入れ替え)方式という結果にしかならず、これはOpen Documentの運命を危うくするという。
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