米VMware、“IPOは重大な節目”とグリーン社長

8月14日、米国VMwareが新規株式公開を果たした。仮想化テクノロジーはビッグビジネスとなり、さらに幅広い認知度が得られるようになるだろう。同社は今後の方向性も語っている。

» 2007年08月15日 15時21分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くVMwareと、同社の共同設立者であり社長でもあるダイアン・グリーン氏が、新たな時代を迎えた。

 8月14日、ニューヨーク証券取引所の開場を告げるベルが鳴らされると同時に、仮想化大手VMwareの3300万株におよぶ株式の売買がウォール街で始まった。新規株式公開(IPO)に至るまでの数週間、アナリストや業界観測筋は、IT業界における過去数年間の歩みの中でも、VMwareによるIPOは最も重要な出来事の1つとして記録されるだろうと推測していた。

 14日の昼までに投資家が次々と買い注文を出し、当初は1株当たり29ドルで売り出されたVMwareの株価は、1週間以上前から金融不安に陥っていた市場で1株50ドルの値をつけた。同日の取引終了時には、1株当たり51ドルに達している。初日に3300万株を売却したことで、VMwareの資本金は9億ドル以上増加し、株式時価総額も100億ドルを超える見込みとなった。

 VMwareの社長兼最高経営責任者(CEO)として今回のIPOを監督したグリーン氏は、同社が不安定な新興企業から安定した株式公開企業へ飛躍したことについて、極めて大きな一歩であると述べた。今後は同氏自身も、IT業界および財界の両方で、より重要かつ公的な役割を果たさなければならない。

 株式公開の数時間後にeWEEKのインタビューを受けたグリーン氏は、「当社にとって、間違いなくきわめて重大な転換点だ。VMwareの認知度を大きく引き上げたと思う。われわれは、自分たちのソフトウェアに誇りを持っている。われわれの顧客も製品をたいへん気に入ってくれているが、そのこと自体を顧客に知らしめるのは簡単ではなかった。このためにも本日の成果には非常に興奮している。会社を築き上げたVMwareの社員にも、すばらしい1日となった」と話した。

 グリーン氏が夫の助けを得て1998年に設立したVMwareは、「hypervisor」技術を擁してx86サーバ仮想化市場に参入した。hypervisor技術がIT管理者やCIOの支持を集め始めるにつれ、VMwareは規模を拡大し、ほかの企業も同分野に参加するようになって、結果的に同技術はメインストリームの地位を獲得した。

 hypervisor技術にいち早く取り組んだグリーン氏とVMwareは、仮想化市場で圧倒的に有利な立場に立った。2004年にVMwareを6億ドルで買収したEMCは、2007年に入り、同社株式の約10%を売却することを決定して、VMwareが開発や研究、その他のプロジェクトにさらなる資金を投入できるよう道をつけた。

 「将来性のあるロードマップを用意しているため、これからも多額の予算を研究開発に割いていくつもりだということを、一貫して内外にアピールしてきた。ソリューションを共同開発し、それを市場に流通させる際のパートナーに対するサポートを、今後も継続的に強化していきたい。また、われわれの製品をさらに普及させることで、仮想化プラットフォームの真価を引き出す高性能かつ先進的な製品を開発する力を、今以上に高めたいと考えている」(グリーン氏)

 EMCが7月に発表した第2四半期の収支報告によると、6月30日に終了した同四半期におけるVMwareの収入は2億9680万ドルにおよび、2006年同期の1億5640万ドルを大きく上回ったという。

 Gartnerの副社長兼最高リサーチ責任者のトム・ビットマン氏は、VMwareはIPOによって獲得した資金の一部を新たなコンサルティング部門に投資し、事業を活性化させる重要な買収も検討していくだろうと指摘している。

 IPOという追い風を受けてはいるが、オープンソースの「Xen」hypervisor技術を利用し、みずからを低コスト製品プロバイダーと位置づけるXenSourceやVirtual Iron Softwareといったベンダーと、VMwareは激しい競争を繰り広げるようになっている。

 もっともビットマン氏は、これらのベンダーがVMwareと競合しているのは確かだが、いちばんの脅威となるのは、Microsoftの「Windows Server 2008」と、今年末までにβ版がリリースされる同社の「Viridian」hypervisorだと述べている。

 「5〜6年前までは、基本的にVMwareの競合社は存在していなかった。同社が初めて本格的な競争を経験したのは、オープンソース製品のXenを利用するベンダーが登場したときであり、次なる強敵は、Microsoftが今年後半にβ版を提供するViridianだと目されている。管理技術にもよりいっそう磨きをかけてきたMicrosoftの製品は、VMwareの手強い競争相手となるだろう」(ビットマン氏)

 VMwareのIPOは、Hewlett-PackardやIBMなどの大手OEM企業に、自社もしくは他社の仮想化技術に対する投資を促すという点でも、市場に変化をもたらす可能性がある。Credit Suisse Groupが8月9日に発表した研究報告書には、Citrix SystemsがXenSource、あるいはVirtual Ironを買収し、hypervisor技術を取得するかもしれないと示唆されていた。

 IPOの実施後は、VMwareの仮想化技術にさらなる投資を行い、精度を向上させていくつもりだと、グリーン氏は述べている。具体的には、「Virtual Infrastructure」スイートのようなデータセンター向け製品ばかりでなく、デスクトップ仮想化製品や管理製品にも力を入れるのだという。

 VMwareはこのほかにも、製品の可用性を最大化し、データセンターにおけるディザスタリカバリやエネルギー節約を実現することを計画している。

 「基礎となる仮想化プラットフォームにはまだまだ改善の余地があり、われわれはそうした取り組みを精力的に進めている。これに関しては、ハードウェアおよびプロセッサベンダー、そして一部の周辺機器ベンダーから協力を得ている。また、当社にはVirtual Infrastructureという製品があるが、こちらには、ソフトウェアを動作させ、常にアクセス可能かつ応答可能な状態にしておく機能を組み込んでいるところだ。高可用性、ディザスタリカバリ耐性、安全性を実現する技術を確立し、それをさらに強化するためにすべきことは、まだたくさん残っている」(グリーン氏)

 VMwareは、ほかのベンダーや他社のアプリケーションに対するオープンな姿勢を保つことも気にかけていると、グリーン氏は主張している。特に、XenSourceが今週初めに最新の「XenEnterprise」プラットフォームをリリースしてからは、VMwareは自社のプロプライエタリ技術を顧客に押しつけているという批判の声が大きくなっていた。

 「われわれは2年前にコミュニティーソースプログラムを開始し、大小合わせて30以上のパートナーを集めた。彼らは、当社のソースコードに自由にアクセスし、一般的な機能やブラックボックス機能を追加することが認められている。プロトコルのAPIフォーマットもサードパーティに公開し、使用を許可しているにもかかわらずオープンでないなどと批判されるのは理解できない。VMwareは、業界との協働にかけてはきわめて進歩的であり、パートナーや幅広いベンダーとも非常に友好的につきあってきたと自負している」(グリーン氏)

 親会社であるEMCとの関係については、これからも変わらないとグリーン氏は言う。ただし、同氏自身はEMCの上級副社長を辞任する予定だ。

 「今現在は、VMwareに戻り、事業の舵取りをしていくのを楽しみにしている」と、同氏は語った。

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