マイクロソフトが新市場で説く「思想」の違い(1/2 ページ)

マイクロソフトがERP市場に参入することで注目されるのは、従来のERP製品とは対極ともいえる「思想」にある。

» 2007年08月20日 07時00分 公開
[松岡功,アイティセレクト編集部]

 マイクロソフトがERP市場に参入することで注目されるのは「ユーザーがERPの仕様や規定に合わせるのではなく、ERPがユーザーニーズに柔軟に対応する」という製品そのものの「思想」である。

 従来のERP製品とは対極ともいえるだけに、ユーザーとしてもそうした思想の違いをしっかりと認識しておく必要がありそうだ。

利用企業のあり方を映すERPの思想

 パートナー企業との連携体制も、まずは順調にスタートしたマイクロソフトだが(参照記事)、そのパートナー企業との連携にも深く関わってくるのが、ダイナミクスAXのERP製品としての思想である。これについては正確を記すため、同社のプレスリリースにあるくだりをそのまま紹介しておこう。

 「従来のERP製品は、ERP側が規定したルールや作業画面に従業員側が従うというものでした。ダイナミクスAXは、ユーザー個人の嗜好や業務に、ERP側が柔軟に対応します。この機能により、ユーザー毎に利用する言語を切り替えたり、表示項目を変更したりといった個人レベルでのカスタマイズが可能になり、生産性を向上させます」

 つまり、「ユーザーがERPの仕様や規定に合わせるのではなく、ERPがユーザーニーズに柔軟に対応する」のである。冒頭で紹介した「あなたを自由にするERP」とは、このことである。

 これは、従来のERP製品とは対極ともいえる思想だ。従来のERP製品は、企業のあるべき姿を描いてそれを実現することを本来の目的とし、長年培われてきたERPとしてのベストプラクティス(最良の手法)を活用することが、思想としてあった。かつて大手ERPベンダーの首脳がこう語っていた。

 「世界の名だたる優良企業で成功したプラクティスを移植する、いわば“先人の知恵”を利用できるわけですから、そのメリットは計り知れません」

 ただし、この思想は言い換えると「ユーザーがERPの仕様や規定に合わせる」ことを要求してきたのも事実だ。ここで誤解のないように述べておきたいのは、どちらが良い悪いという話ではないことである。肝心なのは、利用する側として両方の思想に基づくERP製品のメリット、デメリットをしっかりと認識し、どちらが自らのERP利用の取り組みに適合しているか、を選別する“眼”を持つことである。

 そして、そのポイントはERP製品より、むしろ利用する企業の業務形態や業務改革の進め方にあるだろう。ERP製品の思想は、利用する企業のあり方を映し出すと、筆者は考える。

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