これまで「ERP製品の思想」をテーマに述べてきたが、もう1つERP製品を語るうえで押さえておきたい最新のトレンドがある。それはSOA(サービス指向アーキテクチャー)を取り入れたERPパッケージのサービス化の動きだ。
例えば、ERPベンダー最大手の独SAPはここ最近「エンタープライズSOA」と名付けた戦略のもと、ERPのさまざまな機能をサービスとして提供する仕組みづくりに力を入れている。これが実現すれば、ユーザー企業はそうしたサービスを組み合わせて自社の業務に合ったシステムを構築できるようになる。こうしたSOAへの取り組みは、SAPに対抗するオラクルなども熱心だ。
SOAへの取り組みは、厳密に言うと思想というより開発手法の話だが、結果的にマイクロソフトのダイナミクスAXの思想と同様、「ユーザーがERPの仕様や規定に合わせるのではなく、ERPがユーザーニーズに柔軟に対応する」形になっていくと思われる。さらにそうした動きと並行して、インターネットを介してアプリケーションソフトをオンデマンドで提供する「SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス」への対応も徐々に迫られるようになってくるだろう。
SOA、SaaSともこれからのERP製品の思想には少なからず影響を与えるだろうが、そうした変化も捉えながら、それぞれのERP製品の根底にある思想には今後ともぜひ眼を向けたいところだ。マイクロソフトのダイナミクスAXの登場は、その意味でもエポックメーキングな出来事だといえる。
(「月刊アイティセレクト」2007年9月号のトレンドフォーカス「激戦!ERP市場 マイクロソフト参入で注目される『思想』の違い」より)
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