Dynamicsの2つの“波”、いいとこ取りの統合へ(1/3 ページ)

Microsoft Business Solutions部門の新しいERP製品が2008年以降に登場する見通しだ。この製品は、同部門の4つの既存ERP製品で提供される機能を搭載するが、Dynamics AXに最も似たものになりそうだ。

» 2006年08月09日 07時00分 公開
[Chris Alliegro,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Microsoftが進めるDynamics Wave Twoの一環として、同社の4つのERPアプリケーションがそれぞれアップグレードされるとともに、新しいERP製品が登場する見通しだ。Dynamics Wave Twoは、Microsoft Business Solutions(MBS)部門の製品ポートフォリオに一貫性を持たせ、将来の製品統合の基盤を作るためのプロジェクトの第2段階に当たるものだ。

 この新製品には、既存の4つのERPアプリケーションすべての機能が搭載されるが、そのアーキテクチャ、サービス、プログラミングインタフェースは、Dynamics AX(旧称:Axapta)に最も似たものになりそうだ。このため、この新製品は、AX以外の製品の顧客やパートナーにとっては移行しにくいかもしれない。

最終目標はERP製品の一本化

 Microsoftは2001年にGreat Plainsを、2002年にNavisionを買収して間もなく、両社の買収で得た類似した4つのERP製品(現在の名称はDynamics AX、GP、NAV、SL)を統合する計画について語り始めた。ERP製品を1つに統合することは、MBSのいくつかのビジネス目標に役立つ。MBSは着実に売上高を伸ばしてきたが、最近になってようやく黒字化を達成したばかりだ

 最も明らかなのは、ERP製品の統合により、同部門の重複する4つの製品ラインで発生している余計な開発作業をなくせることだ。さらに、1つの製品に特化した一貫性の高い戦略が取られるようになるため、Microsoftのマーケティングやパートナー支援業務が簡素化されるとともに、同社の販売チャネルの効率が向上し、新しい顧客やパートナーを獲得しやすくなるだろう。

 当初はERP製品をゼロから作り直すProject Greenという構想が描かれていたが、Microsoftは現在、Dynamics Wave One、Wave Two(Dynamics第1の波、第2の波)と銘打った2段階のリリースの“波”を通じて、今後5年以上をかけてERP製品を統合する計画を打ち出している。ほぼ完了しているDynamics Wave Oneでは、まだ基本的に別個である4つの製品で、ユーザーインタフェース(UI)と技術の一貫性が一定程度確保されている。

 現在の計画では、Wave Twoは2008年から少なくとも2009年まで続き、4つの各ERP製品の少なくとも1つのメジャーリリースが提供される。これらのメジャーリリースでは、4製品のUI、プラットフォーム技術、プログラミングインタフェースの一貫性が向上し、各製品のコア機能も強化される。

 だが、おそらく最も重要なのは、Wave Twoでは、4つの既存ERP製品ラインの「最良のアプリケーション機能」を兼ね備えるとされる新製品が登場することだろう。このいいとこ取りの製品が、Microsoftの将来の統合ERP製品の基盤になる。

AXをベースに

 Microsoftは2005年にこのいいとこ取りの製品について発表した際、この計画中の製品では、4つの既存ERP製品の機能が単一のコードベースに集約され、それが最終的な統合製品の基盤になることを示唆していた。

 しかし、MBS幹部の最近のコメントからは、Microsoftが将来的に提供する単一のERP製品は、AXを構成するサービス、データモデル、プログラミングインタフェース、言語などをベースに発展したものになることがうかがえる。

 既存製品の1つをERP製品の将来戦略の基盤に据えることは、おそらくMicrosoftの最も現実的な選択だ。当初のProject Greenで計画されていたように.NETをベースにゼロから製品を作り直すのは、コストがかさみ困難だろう。

 一方、既存のすべてのERP製品を、使用可能なコードベースに統合するのは技術的に不可能だろう。

 各製品ごとに、ランタイムサービス、開発ツール、言語や、プログラミングインタフェースに加え、固有のデータモデルに対応するプロプライエタリなビジネスロジックがまったく異なっているからだ。

 AXは、統合ERP製品の基盤として強力なものだ。AXは、4つの既存ERP製品の中でスケーラビリティや柔軟性、拡張性が最も高く、最も幅広い顧客のシナリオや市場セグメントに適用できる。しかも、AXは、製造と流通というERPアプリケーションの特に重要な市場セグメント向けの機能が強力だ。だが、GP、NAV、SLも、それぞれ固有の機能的強みを持っている。

 例えば、GPは、公共セクター向けの会計モジュールを含んでおり、多くの北米企業にとって最適な会計/財務管理機能を提供する。SLは、プロジェクトベースで業務を行う企業(建設会社など)向けの会計機能が優れている。

 Microsoftの計画では、Dynamics Wave Twoで登場する“いいとこ取り”の製品は、いずれはこれらと同等の機能を備えるようになる。しかし、同社の4つのERP製品は基本的に異なるものであるため、そうしたAX以外の3製品の機能を提供するコードは、統合製品のアーキテクチャに合わせて新規に作成しなければならない。

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